10.皮膚・骨格筋

エブリスディ(リスジプラム)の作用機序【脊髄性筋委縮症】

2021年5月26日、厚労省の薬食審医薬品第一部会にて「脊髄性筋萎縮症」を対象疾患とするエブリスディ(リスジプラム)の承認が了承されました!

現時点では未承認のためご注意ください。

中外製薬|申請のニュースリリース

基本情報

製品名エブリスディドライシロップ60mg
一般名リスジプラム
製品名の由来
製造販売中外製薬(株)
効能・効果脊髄性筋委縮症
用法・の量1日1回食後投与(詳細は記事内
収載時の薬価薬価未収載

 

脊髄性筋委縮症(SMA)の治療薬には、2017年に承認されたスピンラザ髄注(一般名:ヌシネルセン)しかなく、髄注かつ4~6か月毎の投与が一生涯必要でした。

その後、2020年には1回の静脈内投与で治療が完結する遺伝子療法であるゾルゲンスマ(オナセムノゲンアベパルボベク)が承認されています。

ゾルゲンスマ(オナセムノゲンアベパルボベク)の作用機序・特徴【脊髄性筋委縮症】

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いずれの薬剤も注射薬でしたが、今回ご紹介するエブリスディは初の経口投与可能な薬剤です!

 

木元 貴祥
患者さんの治療選択肢が増えることは朗報ではないでしょうか。

 

今回は脊髄性筋委縮症とエブリスディ(リスジプラム)の作用機序についてご紹介します。

 

脊髄性筋委縮症とは

脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy: SMA)は、遺伝的要因により、脊髄等の運動神経細胞(運動ニューロン)が変性・脱落することで、筋収縮刺激がうまく伝達できなくなる疾患です。

そのため、筋力の低下・委縮や筋無力を引き起こし、進行して重篤になると、呼吸や嚥下など生命維持のための基本的な身体機能に支障をきたす恐れがある難病指定の神経変性疾患です。

 

原因としては、5番染色体にある運動神経細胞生存(SMN)遺伝子の変異によると考えられています。

 

正常なSMN遺伝子(SMN1遺伝子)からは、正常な活性を有するSMNタンパク質が合成されます。

しかし、遺伝子のエキソン7に変異のあるSMN2遺伝子を持っている場合、mRNA前駆体のスプライシング過程でイントロンと一緒にエキソン7が切り取られてしまい、活性のない異常SMNタンパク質が合成されてしまいます。

脊髄性筋委縮症とSMN1/SMN2遺伝子

 

参考

  • エキソン:タンパク質情報がコードされている配列
  • イントロン:タンパク質情報がコードされていない配列
  • スプライシング:イントロンが取り除かれ、エキソンのみの配列にする過程
  • 転写:遺伝子(DNA)からmRNA前駆体が合成される過程
  • 翻訳:mRNAからタンパク質が合成される過程

 

SMN2遺伝子によって活性のない異常SMNタンパク質が合成されることで、運動神経細胞が変性し、脊髄性筋委縮症が発症すると考えられています。

 

また脊髄性筋萎縮症には以下の型が知られています。

  • Ⅰ型:重症型、急性乳児型
  • Ⅱ型:中間型、慢性乳児型
  • Ⅲ型:軽症型、慢性型
  • Ⅳ型:成人型

 

脊髄性筋委縮症の症状

全ての型で

  • 筋力低下
  • 筋萎縮
  • 深部腱反射の減弱・消失

などが認められます。

 

特にⅠ型は生後6か月ごろまでに発症しますが、すぐに運動発達が停止し、体を動かすこともできません。Ⅰ型を発症すると、平均6~9か月で死に至り、18か月までには95%が死亡すると推定されています。

 

脊髄性筋委縮症の治療

症状に対する対症療法(経管栄養、胃廔、人工呼吸、リハビリなど)が基本でした。

 

2017年には「アンチセンス核酸医薬品」のスピンラザ髄注12mg(一般名:ヌシネルセンナトリウム)が承認されて使用可能となっていますが、髄注かつ4~6か月毎の投与が一生涯必要でした。スピンラザは全ての型に使用することができます。

スピンラザ(ヌシネルセン)の作用機序【脊髄性筋委縮症】

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2020年に登場したゾルゲンスマは、Ⅰ型のみにしか使用することはできませんが、1回の静脈内投与で治療が完結するといった特徴があります。

ゾルゲンスマ(オナセムノゲンアベパルボベク)の作用機序・特徴【脊髄性筋委縮症】

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今回ご紹介するエブリスディはⅠ~Ⅲ型に使用可能な初の経口治療薬です。

 

エブリスディ(リスジプラム)の作用機序

エブリスディは異常なエキソン7の2部位に選択的に結合するように設計された薬剤です。

エキソン7に結合することで、スプライシング過程においてスキップされることなく、mRNAに翻訳されます。その結果、正常なSMNタンパク質が合成されると考えられています。1-2)

エブリスディ(リスジプラム)の作用機序:エキソン7に結合する

 

また、エブリスディは基礎試験において全身に分布すると考えられるため、全身の神経や筋肉のSMNタンパク質合成能が回復するといった特徴があります。

 

木元 貴祥
脊髄性筋委縮症の治療薬で経口薬は初ですね、すごい!

 

エビデンス紹介:FIREFISH試験、SUNFISH試験

根拠とされている試験は以下の2つの臨床試験で、いずれもプラセボを対照としています。

  • FIREFISH試験3):1~7か月の乳児を対象
  • SUNFISH試験:2~25歳を対象

 

メーカーニュースリリースによれば、いずれの臨床試験でも主要評価項目の達成が確認されたとのことです。FIREFISH試験のパート1は既に論文報告があり、血中SMNタンパク質濃度の上昇が確認されていました。3)

 

副作用

後日更新予定です。

 

用法・用量

通常、生後 2カ月以上2歳未満の患者にはリスジプラムとして 0.2mg/kgを1日1回食後に経口投与します。

通常、2歳以上の患者にはリスジプラムとして、体重20kg未満では0.25mg/kgを、体重20 kg以上では5mgを1日1回食後に経口投与します。

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

エブリスディはこんな薬

  • 脊髄性筋委縮症では初の経口治療薬
  • Ⅰ~Ⅲ型の脊髄性筋委縮症に使用する
  • エキソン7に結合することでスプライシングが回避され、SMNタンパク質が合成される
  • 1日1回経口投与

 

エブリスディはユニークな作用機序でSMNタンパク質合成能を向上させる薬剤です!また、経口投与可能で全身への分布も期待されていることから、脊髄性筋委縮症の予後向上に寄与するのではないでしょうか。

 

ただ、全ての型に使用できるわけではありませんので、その点でスピンラザゾルゲンスマとの使い分けもできそうですね。

 

木元 貴祥
いずれにせよ、治療選択肢の少なかった脊髄性筋委縮症に新薬が登場することは朗報だと思います!

 

以上、今回は脊髄性筋委縮症とエブリスディ(リスジプラム)の作用機序についてご紹介しました。

 

 

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木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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