12.悪性腫瘍

リムパーザ(オラパリブ)の作用機序【卵巣がん/乳がん】

更新日:

今回は国内初のポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害に分類されているリムパーザ錠100mg、同錠150mg(一般名:オラパリブ)についてご紹介します。

製薬会社

  • 製造販売元:アストラゼネカ(株)
  • プロモーション提携:MSD(株)

参考:PARPは“パープ”と読みます。

 

リムパーザの効能・効果は以下の通りです。

 

本日は卵巣がん・乳がんの概要、そしてリムパーザ(オラパリブ)の作用機序についてご紹介します。

 

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卵巣がんと治療

卵巣がんは、卵巣に発生するがんです。

 

新たに診断される人数は、1年間に10万人あたり14.3人と言われています。

また、40歳代から増加を始め、50歳代前半から60歳代前半でピークを迎え、その後は次第に減少します。

卵巣がんの約10%は遺伝的要因によるものと考えられており、BRCA遺伝子変異があると、発症する危険性を高めることがわかっています。

参考:BRCAは“ブラカ”と読みます。

 

初期治療

卵巣がん治療の基本は手術です。

まずは手術によって、がんの拡がり具合を確認するとともに、がんを手術で取り除きます。

その後、基本的には術後に、白金(プラチナ)系薬剤のカルボプラチンと、タキサン系薬剤のパクリタキセルを併用した抗がん剤治療を4~5カ月程行います。

 

上記の治療によって、治癒する患者さんもいらっしゃいますが、残念ながら再発してしまう患者さんもいらっしゃいます。

再発の時期としては、治療後2年以内が多くみられます。

 

再発時の治療

再発卵巣がんでは、初回の抗がん剤治療完了から6カ月以上経過している場合、もう一度、白金(プラチナ)系薬剤を含んだ抗がん剤治療が行われます。

 

例えば、

などの治療を4~6カ月程行います。

その後は、基本的には無治療で経過観察となりますが、経過観察中にがんが増悪してくることもしばしばありました。

 

今回ご紹介するリムパーザは、BRCA変異の有無に関わらず上記の再発治療が完了した後(本来であれば経過観察中)に投与することで、がんの増悪を抑え、生存期間の延長が期待できる薬剤です!

 

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乳がんの概要

2011年の女性乳がんの罹患数は、約72,500人と、女性のがんの中では最も多く、約20%を占めると言われています。

最近では、北斗晶さんや、小林麻央さんが記憶に新しいと思います。

手術で取り切れるような早期の乳がんでは、5年生存率は80%を超えます(StageⅠ~Ⅱでは90%を超える)ので、治癒することが可能な比較的予後の良いがんとして知られています。

 

ただし、発見時に手術ができない(手術不能)の乳がんや、再発した乳がんでは5年生存率は30%と、治癒を見込むのは難しくなってしまいます(基本的には延命)。

 

従って、日頃の観察やがん検診(マンモグラフィや超音波検査)によって、できるだけ早期に発見することが非常に重要です!!!

また、乳がんの発生には女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっていることが知られています。

 

早期の乳がんの治療

早期の乳がんは基本的には手術によって完全に取り除くことが可能です。

場合によっては、術後にホルモン療法や抗がん剤によって再発を抑える治療が行われることもあります。

 

代表的な術後の再発治療としては以下の記事をご覧ください。

 

転移のある乳がんの治療(手術不能)

しかし、発見時に転移がある乳がんの場合、手術はできませんので、薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤、分子標的薬)が基本となります。

乳がんは、がん細胞の性質によって、薬物療法が異なります。

  1. ホルモン陽性の乳がん:ホルモン療法
  2. HER2陽性の乳がん:ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)±パージェタ(一般名:ペルツズマブ)±抗がん剤
  3. ホルモンもHER2も陰性の乳がん:抗がん剤

 

最も多いとされるのが、「ホルモン陽性」の乳がんで、この場合はホルモン療法が基本です。

 

ホルモン陽性の乳がんに対しては

といったCDK4/6阻害薬が使用できます。

 

今回ご紹介するリムパーザはBRCA遺伝子に変異のあるHER2陰性(ホルモン陽性もしくは陰性)の場合に使用できる薬剤です!

日本人では、乳がん全体の約3~5%にBRCA遺伝子変異があると言われています。

 

それではここから、DNAの修復メカニズムとリムパーザの作用機序についてご説明します。

 

DNA修復因子

通常、ヒトの細胞内のDNAが損傷を受けると、「PARP(“パープ”)」や「BRCA(“ブラカ”)」と呼ばれる修復因子によって修復されることが知られています。

PARPはDNAの一本鎖が切断された時、BRCAはDNAの二本鎖が切断された時にそれぞれ修復する因子です。

 

しかしながら、「BRCA」が変異している場合、DNAの修復がうまくできず、がん化する可能性が高くなります。

 

BRCAの変異は、特に乳がん卵巣がんで多いとされています。

 

最近では、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが「BRCA遺伝子の変異」を持っていたことから、2013年に乳房を、2015年に卵巣を摘出したとニュースになっていましたね。

 

リムパーザ(一般名:オラパリブ)の作用機序

リムパーザはDNA修復因子である「PARP」を特異的に阻害する作用機序を有しています!

 

BRCA変異のがん細胞でPARPを阻害すると、一本鎖切断DNAの修復ができずに、二本鎖が切断されてしまいます。

 

本来であれば、二本鎖が切断されると、「BRCA」によって修復されますが、BRCA変異のがん細胞はBRCAが元々変異しているため、修復することができません

従って、がん細胞のDNAが壊れてしまい、「合成致死」と呼ばれるがん細胞死が誘導されると考えられています!

 

正常のヒト細胞では、PARPが阻害され、二本鎖が切断されたとしても、BRCAは正常ですので、BRCAによって元通りのDNAに修復されます。

 

従って、副作用も少ないと考えられていますが、やはり特徴的な副作用(悪心・嘔吐、疲労、貧血等)には注意が必要です。

 

再発卵巣がんのエビデンス紹介:SOLO-2試験

再発卵巣がんの根拠となった臨床試験の一つの「SOLO-2試験」をご紹介します。

 

SOLO-2試験は、BRCA遺伝子変異の再発卵巣がんに対して白金(プラチナ)系薬剤を含んだ抗がん剤治療が行われた患者さんを対象に、プラセボとリムパーザを直接比較する第Ⅲ相臨床試験です。1)

本試験の主要評価項目である「無増悪生存期間(PFS)*」の中央値は、プラセボ群で5.5か月、リムパーザ群で19.1か月と有意にリムパーザ群で延長していました(HR=0.30, p<0·0001)。

 

その他にも、BRCA遺伝子変異を問わず、再発卵巣がんに対して白金(プラチナ)系薬剤を含んだ抗がん剤治療が行われた患者さんを対象に、プラセボとリムパーザを直接比較する第Ⅱ相臨床試験の報告もあります。2)

本試験の主要評価項目である「無増悪生存期間(PFS)*」の中央値は、プラセボ群で4.8か月、リムパーザ群で8.4か月と有意にリムパーザ群で延長していました(HR=0.35, P<0.001)。

 

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乳がんのエビデンス紹介:OlympiAD試験

乳がんの根拠となった臨床試験の一つの「OlympiAD試験」をご紹介します。3-4)

本試験は、タキサン系もしくはアントラサイクリン系薬剤の治療歴のあるBRCA遺伝子変異かつHER2陰性の乳がん患者さんを対象に、一次~三次治療として標準的な治療(カペシタビン or エリブリン or ビノレルビン)とリムパーザを直接比較する第Ⅲ相臨床試験です。

 

本試験の主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」で、結果は以下の通りでした。

試験名OlympiAD試験
試験治療標準的な治療リムパーザ
PFS中央値*4.2か月7.0か月
HR=0.58, P<0.001
全生存期間中央値17.1か月19.3か月
HR=0.90, P=0.513
奏効率28.8%59.9%

*無増悪生存期間(PFS):治療を開始してからがんが大きく(増悪)するまでの期間
†奏効率:がんが30%以上縮小した患者さんの割合

 

本試験の結果より、これまで標準であった抗がん剤と比較してリムパーザはPFSと奏効率は改善しましたが、生存期間の有意な延長は認められませんでした。

 

臨床試験の結果から、リムパーザはBRCA遺伝子変異があるHER2陰性の進行・再発乳がん患者さんに使用されることが想定されます。

BRCA遺伝子変異があっても、ホルモンが陽性の場合、まずはホルモン療法(例:イブランス+フェマーラ)が基本ですので、リムパーザはその後の使用が想定されます。

 

リムパーザ錠の用法・用量

卵巣がんも乳がんも共通です。

通常、成人にはオラパリブとして300mgを1日2回、経口投与します。なお、患者さんの状態により適宜減量します。

 

リムパーザ錠の副作用

主な副作用として、悪心、貧血、疲労、嘔吐、無力症、味覚異常などが報告されています。

 

稀ですが、重大な副作用としては骨髄抑制間質性肺疾患が発現する可能性がありますので、こちらは特に注意が必要です。

 

リムパーザ錠の薬価

収載時(2018年4月18日)の薬価は以下の通りです。

  • 100mg 1錠:3,996.00円
  • 150mg 1錠:5,932.50円

 

まとめ・あとがき

リムパーザはこんな薬

  • PARP阻害薬に分類されている
  • PARPを阻害すると「合成致死」と呼ばれるがん細胞死が誘導される
  • 乳がんに使用する場合にはBRCA遺伝子変異の検査が必須

 

リムパーザを乳がんに使用する場合、BRCA遺伝子の変異有無の測定が必須です。

それに伴い、2018年3月に「BRACAnalysis診断システム」が承認されています。

 

リムパーザはPARP阻害といった初の作用機序を有する薬剤ですので、今後の適応拡大等も期待されています。

以上、本日は卵巣がん・乳がんとリムパーザについてご紹介しました☆

 

引用文献・資料等

  1. SOLO-2試験:Lancet Oncol. 2017 Sep;18(9):1274-1284.
  2. 卵巣がん第Ⅱ相試験:N Engl J Med. 2012 Apr 12;366(15):1382-92.
  3. OlympiAD試験:N Engl J Med. 2017 Aug 10;377(6):523-533.
  4. OlympiAD試験(追加解析):Ann Oncol 2019
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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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