11.血液・造血器系 12.悪性腫瘍

ブレヤンジ(リソカブタゲン マラルユーセル)の作用機序【DLBCL】

2021年3月23日、「B細胞リンパ腫」を対象疾患とするブレヤンジ(リソカブタゲン マラルユーセル)が承認されました!

ブリストル・マイヤーズ スクイブ|ニュースリリース

基本情報

製品名ブレヤンジ静注
一般名リソカブタゲン マラルユーセル
製造販売ブリストル・マイヤーズ スクイブ(株)
効能・効果*①以下の再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫
・びまん性大細胞型B 細胞リンパ種
・原発性縦隔大細胞型B 細胞リンパ種
・形質転換低悪性度非ホジキンリンパ種
・高悪性度B 細胞リンパ種
②再発又は難治性の濾胞性リンパ腫
収載時の薬価34,113,655円

*ただし、CD19抗原を標的としたキメラ抗原受容体発現T細胞輸注療法の治療歴がなく、自家造血幹細胞移植の適応がない患者又は自家造血幹細胞移植後に再発した患者

 

ブレヤンジは、キムリアやイエスカルタに次いで3製品目の「CAR-Tカーティー細胞(キメラ抗原受容体T細胞)療法」に分類されており、患者さん自身の“生きたT細胞”によって治療効果を発揮するといった作用機序ですね!

キムリア(チサゲンレクルユーセル)の作用機序・特徴と副作用【急性リンパ性白血病】

続きを見る

 

上記2製品と異なる適応症は、

  • 形質転換低悪性度非ホジキンリンパ腫
  • 濾胞性リンパ腫

で、これらはブレヤンジのみです。

 

今回は悪性リンパ腫の中でも代表例として「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」とブレヤンジの作用機序・エビデンス等について解説していきます。

 

悪性リンパ腫とは

造血機腫瘍の中でも、リンパ系の血球成分(例:B細胞、T細胞、NK細胞など)から発生するものを「悪性リンパ腫」と呼んでいます。

 

細かい分類は非常に多いのですが、大きく分類すると以下の2種類です。1)

  • ホジキンリンパ腫(HL:Hodgkin lymphoma)
  • 非ホジキンリンパ腫(NHL:Non Hodgkin lymphoma)

 

木元 貴祥
国内ではほとんどがNHLと言われていますね。

 

今回ご紹介するびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL:diffuse large B-cell lymphoma)もNHLの一種に分類されています。

 

また、悪性リンパ腫では、疾患の悪性度や予後の臨床分類としてアグレッシブ分類(低悪性度、中悪性度、高悪性度)が行われますが、DLBCLは「中悪性度」のアグレッシブ分類とされています。

 

そしてDLBCLの原因となるリンパ腫細胞は「B細胞」に由来していることがほとんどで、細胞膜表面には「CD19」を発現していることが知られています。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL:diffuse large B-cell lymphoma)とCD19

 

DLBCLと治療

DLBCLは発見時の進行度(限局期もしくは進行期)によって治療が若干異なりますが、基本は薬物療法です。2)

 

限局期であっても進行期であっても「R-CHOPアールチョップ療法*」を3~8回行い、場合によっては放射線と併用することもあります。

*R-CHOP療法:リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンの併用療法

 

しかし、上記の治療を行って治療効果が得られたとしても、多くの場合、再発してしまうことがあり、その後の治療選択肢は限られていました。

また初回のR-CHOP療法で抵抗性を示した場合にも、その後の治療選択肢は限られています。

 

木元 貴祥
再発・難治性の場合、ガイドラインでは以下の治療法が選択肢として掲載されています。2)
  • DHAP療法:デキサメタゾン、シスプラチン、シタラビン
  • ESHAP療法:メチルプレドニゾロン、エトポシド、シタラビン、シスプラチン
  • ICE療法:イホスファミド、カルボプラチン、エトポシド
  • CHASE療法:シクロホスファミド、シタラビン、デキサメタゾン、エトポシド
  • Dose adjusted-EPOCH療法:エトポシド、プレドニゾロン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン
  • MINE療法:ミトキサントロン、イホスファミド、メスナ、エトポシド
  • GDP療法:ゲムシタビン、デキサメタゾン、シスプラチン

いずれもリツキシマブと併用する場合あり

 

今回ご紹介するブレヤンジは再発・難治性のDLBCLに対して効果が期待されています!

 

CAR-T細胞療法とは:ブレヤンジの治療概念

ブレヤンジは「CAR-T細胞療法」と呼ばれる新たな治療法です。

参考CAR(Chimeric Antigen Receptor):キメラ抗原受容体

 

木元 貴祥
作用機序の前にまずはCAR-T細胞療法の治療概念について説明します。

 

ヒトの体内には異物やがん細胞を排除する機構(免疫機構)が存在しており、その中心を担う細胞として「T細胞」が知られています。このT細胞を改変するのがCAR-T細胞療法です。

 

step
1
患者さんのT細胞を取り出す

CAR-T細胞法ではまず患者さん自身のT細胞を取り出します(下図の①)。

 

step
2
CARを導入する

その後、遺伝子改変技術を用いて白血病細胞のCD19を特異的に認識する受容体である「CAR」をT細胞に導入します(下図の②)。CARは白血病細胞を発見するアンテナのような役割ですね♪

 

step
3
増殖させた後、投与する

CARが導入されたT細胞を「CAR-T細胞」と呼んでいますが、CAR-T細胞を培養・増殖(下図の③)させ、数を増やした後に患者さんの体内に投与します(下図の④)。

イエスカルタ(CAR-T療法)の概念・手順

 

なお、培養したCAR-T細胞を患者さんの体内に投与する前には「前処置」として免疫抑制薬等が投与されます。これはブレヤンジの効果を減弱させてしまう“制御性T細胞”の働きを事前に抑制させる目的です。

 

このように患者さんが本来持っているT細胞を改変して、白血病細胞をより認識するように設計されたのがCAR-T細胞療法です。

従って、ブレヤンジは「患者さん自身のCAR-T細胞」を主成分とする医薬品です!

 

木元 貴祥
ブレヤンジは患者さん毎に作成されるため、AさんにはAさん専用のCAR-T細胞、BさんにはBさん専用のCAR-T細胞といった具合ですね。

 

ブレヤンジ(リソカブタゲン マラルユーセル)の作用機序と特徴

体内に投与されたCAR-T細胞は、CD19を発現したリンパ腫細胞を特異的に認識して攻撃します。

その結果、リンパ腫細胞の死滅・増殖抑制効果が得られると考えられています。

イエスカルタ(アキシカブタジン シロルーセル)の作用機序と特徴

 

また、投与されたCAR-T細胞が体内に定着すると、自分自身で増殖することができますので、永久的にCD19を発現したリンパ腫細胞を監視・攻撃することが可能です!

 

そのためブレヤンジは基本的には1回の投与で治療が完了します。

イエスカルタの特徴:1回の投与で生着する

 

このようにブレヤンジは患者さん自身の“生きたT細胞”によって治療効果を発揮する新規の治療法です!

 

副作用:サイトカイン放出症候群と対策

CAR-T細胞療法では特徴的な副作用として以下が挙げられています。

  • サイトカイン放出症候群(悪心、倦怠感、頭痛、発熱、頻脈、など)
  • 神経毒性(脳卒中、錯乱、せん妄、振戦、傾眠、など)

 

特にサイトカイン放出症候群は死に至る可能性もあるため特に注意が必要です!!

 

類薬のキムリアやイエスカルタでは、サイトカイン放出症候群の対処薬としてアクテムラ点滴静注用(一般名:トシリズマブ)が使用可能とされています。

キムリア(チサゲンレクルユーセル)の作用機序・特徴と副作用【急性リンパ性白血病】

続きを見る

 

木元 貴祥
ブレヤンジも同様の対策が必要とされています。

 

収載時の薬価

収載時の薬価は以下の通りです。

  • ブレヤンジ静注(1患者当たり):34,113,655円
【新薬:薬価収載】13製品+再生医療等製品(2021年5月19日)

続きを見る

 

ちなみに再生医療等製品の保険適用は、医薬品(薬価)医療機器(材料価格)か、個別に判断されます。

<平成 26 年 11 月5日 中医協総-2-1(抜粋)>

1.保険適用に係る今後の対応について

○ 再生医療等製品の保険適用に関する当面の間の対応
・薬事法改正後に承認(条件・期限付承認を含む。)された再生医療等製品については、保険適用の希望のあった個別の製品の特性を踏まえ、医薬品の例により対応するか、医療機器の例により対応するかを、薬事承認の結果を踏まえて判断

 

※引用:厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第285回) 議事次第

 

木元 貴祥
類薬のキムリアが医薬品として薬価収載されていますので、ブレヤンジも同様ですね。

 

まとめ・あとがき

ブレヤンジはこんな薬

  • 国内3製品目のCAR-T細胞療法
  • 患者さん自身の“生きたT細胞”によって治療する
  • 1回の投与で治療が完了する
  • サイトカイン放出症候群と神経毒生に注意が必要

 

ブレヤンジはCAR-T細胞療法といった新規の作用機序を有する医薬品です!

 

ただ、CAR-T細胞療法は現時点では血液がん(造血器腫瘍)にしか効果がなく、固形がん(例:大腸がん、肺がん、胃がん、等)には効果が示されていません。

 

木元 貴祥
何かしらの工夫が求められていますので、今後、固形がんへの広がりについても期待したいと思います☆

 

以上、今回は悪性リンパ腫の中でも「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」とブレヤンジの作用機序・エビデンス等について解説しました!

 

引用文献・資料等

  1. がん情報サービス|びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
  2. 日本血液学会|造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版

 

 

 

製薬の求人多数!実体験記事を確認!

 

単発派遣アリ!?実体験記事はこちら

 

薬剤師の副業 本当に稼げるおススメ3選と注意事項を解説!

続きを見る

失敗しない薬剤師の転職とは?

数多く存在する薬剤師専門の転職エージェントサイト

どこに登録したらいいのか悩むことも少なくありません。そんな転職をご検討の薬剤師さんに是非見ていただきたい記事を公開しました。

  • 新薬情報オンラインの薬剤師2名が実際に利用・取材!
  • 各サイトの特徴等を一覧表で分かりやすく掲載!
  • 絶対にハズレのない厳選の3サイトを解説!

上手に活用してあなたの希望・条件に沿った【失敗しない転職】を実現していただけると嬉しいです!

薬剤師の転職サイト3選|評判・求人特徴とエージェントの質を比較

続きを見る

コロナ渦で改定しました。



薬剤師の勉強・情報収集に役に立つ無料サイト・ブログ8選
  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

プロフィール・運営者詳細
お問い合わせ・仕事の依頼
私の勉強法紹介

TwitterとFacebookとインスタでも配信中!

-11.血液・造血器系, 12.悪性腫瘍
-, ,