5.内分泌・骨・代謝系 疾患・作用機序まとめ

【骨粗鬆症】PTH製剤一覧:オスタバロ・テリボン・フォルテオ

今回は骨粗鬆症に使用される副甲状腺ホルモン製剤(PTH製剤)についてご紹介します。

 

効能・効果はいずれも「骨折の危険性の高い骨粗鬆症」で、現在以下の製品が承認・販売されていますね。

  • フォルテオ皮下注キット(テリパラチド)
  • テリボン皮下注用(テリパラチド酢酸塩)
  • テリボン皮下注オートインジェクター(テリパラチド酢酸塩)
  • オスタバロ皮下注カートリッジ(アバロパラチド酢酸塩):電動式注射器「オスタバロインジェクター」を使用して、自己注射可能

 

オスタバロは皮下注3mg製剤が2021年3月に承認されましたが、28日投与製剤であるため、新薬の「14日処方制限」に引っかかりました。そのため、薬価収載や発売は暫く見送られています。

 

その後、2022年8月31日にカートリッジ1.5mg製剤が承認され、2022年11月に薬価収載されました。

【新薬:薬価収載】16製品(2022年11月16日)

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オスタバロは専用のインジェクター(カラーディスプレイ)を用いて自己皮下注投与が可能ですね!ハイテク!

オスタバロ|製品ページ

 

木元 貴祥
PTH製剤は、自己注射の有無や投与間隔、最長投与期間等が少し異なっていますよ。

 

今回は骨粗鬆症とPTH製剤の作用機序、そして各製品の比較・一覧表についてご紹介します。

 

骨の代謝(リモデリング)

骨には大きく以下の2つの役割があります。

  • 体の骨格維持
  • 電解質バランス(特にカルシウム)の維持

 

これらの役割を果たすために、骨は「リモデリング」と呼ばれる代謝を繰り返して、常に丈夫な骨が保たれています。

 

リモデリングに関わる細胞には、骨を壊す「破骨細胞」と骨を作る「骨芽細胞」が知られています。

破骨細胞が古くなった骨を壊し(“骨吸収”と呼びます)、壊された部分に骨芽細胞が新しい骨を作ります(“骨形成”と呼びます)。

破骨細胞と骨芽細胞によるリモデリングのイメージ

 

このようなリモデリングがバランス良く行われることで、約2年で全身の骨が作り替えられと言われています。

 

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症は、加齢やホルモンバランス等により、このリモデリングのバランスが崩れ、破骨細胞による骨吸収が過剰になって引き起こされます。

 

つまり、破骨細胞が活性化され、骨吸収が過剰に引き起こされることで、骨はどんどんと脆くなり、骨折しやすくなります。

 

これが骨粗鬆症です。

 

治療

治療の中心は薬物療法ですが、並行して運動療法や食事療法も行われます。

 

主に使用されている薬剤の分類は以下の通りです。

  • 骨吸収抑制薬:エストロゲン製剤、ビスホスホネート製剤、SERM、デノスマブ、カルシトニン製剤など
  • 骨形成促進薬:活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤、副甲状腺ホルモン製剤(PTH)など
  • その他:カルシウム製剤

 

主に用いられるのは骨吸収抑制薬でしょうか。

 

また、最近では骨吸収抑制作用骨形成促進作用を併せ持ち、1か月に1度の投与で治療可能なイベニティ皮下注(ロモソズマブ)も登場してきました。

イベニティ皮下注(ロモソズマブ)の作用機序と副作用【骨粗鬆症】

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木元 貴祥
それではここからPTH製剤の作用機序について解説していきます。

 

副甲状腺ホルモン製剤(PTH製剤)の作用機序

生体内でのPTHの働きは以下の2つがあります。

  1. 骨芽細胞に作用し、骨形成を促進させる
  2. 活性型ビタミンDへの変換促進による腸からのカルシウム吸収促進

副甲状腺ホルモン製剤(PTH製剤)の作用機序:オスタバロ・テリボン・フォルテオ

 

骨粗鬆症では破骨細胞(骨吸収)が優位になっていますが、骨芽細胞を活性化させることで骨吸収を促進させ、リモデリングのバランスを調整するといった作用機序ですね。

 

ただし、長期間投与してしまうと、骨腫瘍が発生する可能性があるため、PTH製剤にはいずれも投与可能期間の上限が設けられています。

 

PTH製剤の一覧表:フォルテオ・テリボン・オスタバロ

2023年2月時点のPTH製剤の一覧表です。

PTH製剤の一覧表:フォルテオ・テリボン・オスタバロ

 

フォルテオは自己投与可能な初のPTH製剤でしたが、1日1回投与する必要がありました。

テリボンは自己投与する場合でも週2回の投与で治療可能なため、煩雑さは解消されている印象です。

オスタバロは専用の電動式注射器「オスタバロインジェクター」を使用して、自己投与可能です。ディスプレイの案内に沿って進めることで薬液まで自動で投与されるといった優れもの!

 

フォルテオ・テリボンはいずれも投与可能期間の上限が2年間(24か月)ですが、オスタバロについては1年半(18か月)とされました。

 

木元 貴祥
フォルテオについてはバイオ後続品(バイオシミラー)も登場してきていますので、今後の使い分けの検討が色々進むかと思います!

 

まとめ・あとがき

PTH製剤はこんな薬

  • 骨芽細胞を活性化することで骨形成を促進させる
  • 最大投与期間の上限が設定されている(約2年)
  • 在宅自己投与可能な製剤もある

 

骨粗鬆症でよく用いられているのはビスホスホネート製剤かと思います。最近では1年に1回の投与で治療可能なリクラスト(ゾレドロン酸)も登場しました。

リクラスト(ゾレドロン酸)の作用機序と副作用【骨粗鬆症】

続きを見る

 

また、PTH製剤は“骨折の危険性の高い”骨粗鬆症によく使用されていましたが、最近では1か月に1度の投与で治療可能なイベニティ皮下注(ロモソズマブ)も登場しましたので、使い分けの検討が必要かもしれません。

イベニティ皮下注(ロモソズマブ)の作用機序と副作用【骨粗鬆症】

続きを見る

 

以上、今回は骨粗鬆症とPTH製剤の作用機序、そして各製品の比較・一覧表についてご紹介しました!ご参考にしていただければ幸いです♪

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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