2.循環器系

ベリキューボ(ベルイシグアト)の作用機序【心不全】

2021年4月28日、厚労省の薬食審医薬品第一部会にて新規の慢性心不全治療薬であるベリキューボ(ベルイシグアト)の承認が了承されました!

前回、2021年2月25日の同部会では残念ながら継続審議となっていました。

バイエル薬品|申請のニュースリリース

現時点では未承認のため、ご注意ください。

基本情報

製品名ベリキューボ錠2.5mg/5mg/10mg
一般名ベルイシグアト
製品名の由来
製造販売バイエル薬品(株)
効能・効果慢性心不全
ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。*
用法・用量通常、成人にはベルイシグアトとして、1 回2.5 mg を1 日1 回食後経口投与から開始し、
2 週間間隔で1 回投与量を5 mg 及び10 mg に段階的に増量する。
なお、血圧等患者の状態に応じて適宜減量する。
収載時の薬価薬価未収載

*効能又は効果に関連する注意

  • 左室駆出率の保たれた慢性心不全における本薬の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。
  • 「臨床成績」の項の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(前治療、左室駆出率、収縮期血圧等)を十分に理解した上で、適応患者を選択すること。

 

ベリキューボは慢性心不全治療薬としては初の可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬に分類されています。

 

木元 貴祥
他疾患の肺動脈性肺高血圧症では既に使用されている治療概念ですね。
アデムパス(リオシグアト)の作用機序【肺動脈性肺高血圧症】

続きを見る

 

今回は、慢性心不全とベリキューボ(ベルイシグアト)の作用機序についてご紹介します。

 

心臓と血液循環

ご存知の通り、心臓は大きく4つの部位(右心房・右心室・左心房・左心室)に分かれていて、通常、成人の心臓は以下の図のような流れで血液が循環しています。

 

  1. 右心房に血液が流入(大静脈)
  2. 右心室から肺に血液を送る(肺動脈)
  3. 肺で酸素を受け取る
  4. 左心房に血液が流入(肺静脈)
  5. 左心室から全身に血液を送る(大動脈)

 

このように心臓は血液を肺や全身に送る際のポンプとしての役割を担っています。

 

心不全の症状と分類

心臓の器質的もしくは機能的な障害によって、心臓のポンプ機能が低下して十分な血液を送り出すことができなくなった状態を「心不全」と呼んでいます。

 

その結果、肺や全身の静脈に血が溜まりうっ血による症状が主体となります。従って、心不全のことを「うっ血性心不全」と呼ぶこともあります。

用語解説静脈に血が溜まることを「うっ血」と呼びます。

 

心不全は進行速度や緊急性に応じて以下に分類されますが、薬物治療が関係するには慢性心不全ですので、今回は慢性心不全を中心に解説します。

  • 急性心不全:急激に進行し、治療に緊急性を要する
  • 慢性心不全:無症状状態が長期間続き、徐々に進行する

 

このような心不全の原因のほとんどは心室(左心室and/or右心室)の異常です。

 

木元 貴祥
様々な原因(心疾患、肺疾患、代謝異常、アルコール多飲、等)によって心室の機能が低下することで心不全を発症すると考えられています。

 

同時に血管の収縮による循環障害も心不全を悪化させる要因です。

 

例えば、血管の収縮や拡張を担う機構として、

  • プロスタグランジンI2(PGI2)経路
  • 一酸化窒素(NO)経路
  • エンドセリン経路

が知られています。

血管収縮に関する経路:プロスタグランジンI2(PGI2)経路、一酸化窒素(NO)経路、エンドセリン経路

 

慢性心不全では特に「一酸化窒素(NO)経路」のNOの利用能障害が起こっていると考えられ、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)が十分に刺激されないため、cGMPが産生できずに血管収縮が引き起こされます。

PGI2経路やエンドセリン経路については別記事にて解説していますので併せてご参考くださいませ~。

【肺動脈性高血圧症】エンドセリン受容体拮抗薬の作用機序と一覧・使い分け

続きを見る

 

また、NOは心筋でも重要な因子です。

NOがsGCを刺激することでcGMPが産生され、心収縮能の維持、心筋保護、心臓リモデリングの活性化を担っていると考えられています。慢性心不全ではこの経路も障害されるため、心機能の低下が引き起こされます。

NOが心筋に作用することでsGCが刺激され、心収縮や心保護作用を有する

 

木元 貴祥
心不全の病態には血管や心臓のNOが深く関与しているということですね!

 

左心不全と症状

原因が左心室にあるものを左心不全と呼びます。

左心室から大動脈に血液を送りにくくなるため、大動脈血流量が低下し、

  • 低血圧
  • 冷汗
  • 乏尿(尿量の低下)
  • チアノーゼ

といった症状が現れます。

 

また、肺静脈からの血液が溜まってしまい、肺静脈うっ血を呈するため、

  • 労作時の息切れ
  • 呼吸困難

といった症状も現れます。

 

左心不全はそのまま放置しておくと、続いて右心不全が起こることもあると言われています(両心不全)。

 

右心不全と症状

原因が右心室にあるものを右心不全と呼びます。

右心室から肺動脈に血液を送りにくくなるため、肺動脈血流量が低下し、二酸化炭素と酸素の交換がうまくいかなくなります。

 

また、大静脈からの血液が溜まってしまい、大静脈うっ血を呈するため、

  • 浮腫
  • 腹水(腹部膨満感)

といった症状が現れます。

 

心不全の分類

多くの場合、左心不全(左心室機能障害)が関与していて、治療や評価も左心機能がどうかによって変わってきます。

従って、国内のガイドラインでは左室駆出率(LVEF)に応じた分類が行われています。1)

 

参考

  • 左室駆出率(LVEF:left ventricular ejection fraction)
    ⇒左心室の機能に関する指標。「(左室拡張末期容積-左室収縮末期容積)÷左室拡張末期容積」で計算する。

 

分類LVEF
LVEFの低下した心不全(HFrEF)40%未満
LVEFの保たれた心不全(HFpEF)50%以上
LVEFが軽度低下した心不全(HFmrEF)40%以上
50%未満

略語解説

  • HFrEFヘフレフ:heart failure with reduced ejection fraction
  • HFpEFヘフペフ:heart failure with preserved ejection fraction
  • HFmrEF:heart failure with midrange ejection fraction

 

多くの場合はHFrEF(LVEFの低下した心不全)とHFpEF(LVEFの保たれた心不全)ですね。

 

木元 貴祥
今回ご紹介するベリキューボは基本的にはHFrEFに使用します。

 

心不全の治療

心不全の治療1)は、

  • HFrEF(LVEFの低下した心不全)
  • HFpEF(LVEFの保たれた心不全)

で分かれていますが、基本は体液量を減らしたり、血圧を低下させたりすることで心臓への負荷を軽減させます。

 

HFrEFの場合、

が最も推奨されていて、単剤もしくは適宜併用したものが標準治療です。最近ではこれら標準治療にSGLT2阻害薬のフォシーガ(ダパグリフロジン)を上乗せすることもあります。

フォシーガ(ダパグリフロジン)の作用機序【糖尿病/心不全/CKD】

続きを見る

 

参考までに、HFrEF患者さんでは洞調律どうちょうりつでの安静時心拍数が70拍/分を超えると死亡や入院のリスクが高まることが知られています。2)

 

参考

<洞調律とは>

洞結節で発生した電気的興奮が正しく心臓全体に伝わり、心臓が正常なリズムを示している状態

【出典】日本心臓財団|心臓病用語集>洞調律

 

木元 貴祥
安静時の心拍数が高いと死亡・入院のリスクになる、ということですね。

 

そのため、国内・海外のガイドライン1-2)では、ACE阻害薬(またはARB)、MRAを行っても安静時心拍数が70拍/分を超えている場合、心拍数を低下するためにコララン(イバブラジン)が推奨されています。

コララン(イバブラジン)の作用機序・特徴【心不全】

続きを見る

 

心拍数が正常(70拍/分未満)の場合にはACE阻害薬(またはARB)の他、エンレスト(サクビトリルバルサルタン)が推奨されていますね。

エンレスト(サクビトリルバルサルタン)の作用機序・特徴【心不全】

続きを見る

 

代表的なMRAについては以下の記事で解説していますのでご参考にしてみてください。

ミネブロ(エサキセレノン)の作用機序・特徴:セララとの違い【高血圧】

続きを見る

 

木元 貴祥
それではベリキューボの作用機序について解説していきます。

 

ベリキューボ(ベルイシグアト)の作用機序:sGC刺激薬

慢性心不全では前述の通り、NOの利用能障害によってsGCが十分に刺激されずにcGMPが低下している状態です。そのため、血管収縮や心機能の低下が引き起こされています。

 

ベリキューボは心不全では初の可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬に分類されている薬剤です!血管と心臓のsGCが刺激されることでcGMPの産生が促進され、血管拡張作用・心機能改善が得られると考えられています。

ベリキューボ(ベルイシグアト)の作用機序:可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬

 

エビデンス紹介:VICTORIA試験

根拠となった臨床試験は国際共同で実施されたVICTORIA試験です。3)

本試験は左室駆出率が低下した(LVEF45%未満)慢性心不全患者さん(心不全増悪が認められる)を対象に、標準治療への追加療法としてベリキューボを投与した際の影響を、プラセボとの比較で評価することを目的とした国際共同第Ⅲ相試験です。

 

主要評価項目(複合アウトカム)は「心血管死または心不全での初回入院」とされ、結果は以下の通りでした。

試験群ベリキューボ群プラセボ群
主要評価項目
(複合アウトカム)
35.5%38.5%
HR=0.90(95%CI:0.82-0.98)
p=0.02
心不全での初回入院27.4%29.6%
HR=0.90(95%CI:0.81-1.00)
心血管死16.4%17.5%
HR=0.93(95%CI:0.81-1.06)

 

木元 貴祥
比較的重度の心不全を対象としていましたが、有意に主要評価項目を達成していますね!

 

用法・用量

通常、成人にはベルイシグアトとして、1回2.5mg を1日1回食後経口投与から開始し、2週間間隔で1回投与量を5mg及び10mgに段階的に増量します。

血圧等患者の状態に応じて適宜減量

 

副作用

後日更新予定です。

 

収載時の薬価

現時点では未承認・薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

ベリキューボはこんな薬

  • 慢性心不全初の可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬
  • sGC刺激によって血管と心臓のcGMPを上昇させ、血管拡張・心機能改善が期待できる
  • 1日1回経口投与

 

近年、慢性心不全治療薬が相次いで承認・登場してきています。

 

ベリキューボは上記薬剤とは異なる作用機序を有するため、慢性心不全の予後向上に寄与できることを期待したいですね!

 

以上、今回は慢性心不全初のsGC刺激薬であるベリキューボ(ベルイシグアト)の作用機序について解説しました。

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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