新薬承認・薬価収載

【新薬:薬価収載】9製品(2020年11月18日)

2020年11月18日、新薬9製品が薬価収載されました!

 

前回のタイミング(2020年8月)で収載される予定であった経口GLP-1アナログ製剤のリベルサス(セマグルチド)と、上肢痙縮治療薬のゼオマイン(インコボツリヌストキシンA)も今回薬価収載されていますね。

リベルサス(経口のセマグルチド)の作用機序と特徴【糖尿病】

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今回は薬価収載された新薬一覧とその算定根拠についてご紹介します。

 

2020年11月18日:薬価収載の9製品

2020年11月18日に薬価収載された新薬一覧は以下の通りです。

製品名
(一般名)
規格 薬価 効能・効果
(簡略)
リベルサス
(セマグルチド)
3mg1錠
7mg1錠
14mg1錠
143.20円
334.20円
501.30円
2型糖尿病
エナロイ
(エナロデュスタット)
2mg1錠
4mg1錠
275.90円
486.10円
腎性貧血
ジセレカ
(フィルゴチニブ)
100mg1錠
200mg1錠
2,550.90円
4,972.80円
関節リウマチ
ゼジューラ
(ニラパリブ)
100mg1カプセル 10,370.20円 卵巣がん
ゼプリオンTRI
(パリペリドン)
175mg1キット
263mg1キット
350mg1キット
525mg1キット
64,540円
84,829円
102,748円
134,858円
統合失調症
ゼオマイン
(インコボツリヌストキシンA)
50単位1瓶
100単位1瓶
200単位1瓶
18,707円
34,646円
68,922円
上肢痙縮
アキャルックス
(セツキシマブ サロタロカン)
250mg50mL1瓶 1,026,825円 頭頸部がん
ブコラム
(ミダゾラム)
2.5mg0.5mL1筒
5mg1mL1筒
7.5mg1.5mL1筒
10mg2mL1筒
1,125.80円
1,977.80円
2,750.00円
3,474.60円
てんかん重積状態
エクロック
(ソフピロニウム)
5%1g 243.70円 原発性腋窩多汗症

 

薬価の算定方法

各薬剤の薬価算定方法は2020年11月11日の中医協総会の資料に記載されているため、抜粋してご紹介します。

 

リベルサス:類似薬効比較方式(Ⅰ) (オゼンピック)【加算あり】

リベルサス錠の有効成分はオゼンピック皮下注と同じくセマグルチドのため、オゼンピックの1日薬価に合わせて算定されました。

算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。

 

有用性加算(Ⅱ)(A=5%)が加算されていますね!加算前の薬価は7mg錠で328.6円でしたが、加算(×1.05)されて345.00円とされています。

また、規格間調整と外国平均価格調整が行われ、最終的に以下の薬価に決定しました。

 

  • オゼンピック皮下注0.5mgSD:3,094円(1日薬価:442円)
  • リベルサス錠3mg:143.20円
  • リベルサス錠7mg:334.20円(1日薬価:334.20円)
  • リベルサス錠14mg:501.30円

 

木元 貴祥
なお、加算の根拠は以下の通りです。通常は経口投与不可とされていたGLP-1アナログ製剤を経口投与可能とした点ですね!

 

加算の根拠

  • 有用性加算:製剤工夫による有用性(侵襲性が軽減)

 

ピーク時の予測販売金額は116億円です。

 

吸収メカニズムがユニークですので是非チェックしてみてください☆

リベルサス(経口のセマグルチド)の作用機序と特徴【糖尿病】

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エナロイ:類似薬効比較方式(Ⅱ)(バフセオ)

エナロイは同じく腎性貧血治療薬で作用機序の同様なバフセオ(バダデュスタット)の1日薬価に合わせて算定されました。

算定方式は類似薬効比較方式(Ⅱ)です。

 

  • バフセオ錠300mg:376.20円(1日薬価:457.00円 ※平均投与量より算出)
  • エナロイ錠2mg:275.90円
  • エナロイ錠4mg:486.10円(1日薬価:457.00円)

 

ピーク時の予測販売金額は15億円です。

 

作用機序については以下の記事で解説しています。

エナロイ(エナロデュスタット)の作用機序・特徴【腎性貧血】

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HIF-PH阻害薬はこれで4製品となりますので、以下の記事で各薬剤の特徴等についてまとめています。

エベレンゾ(ロキサデュスタット)の作用機序:類薬との比較・違い【腎性貧血】

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ジセレカ:類似薬効比較方式(Ⅱ)(類似薬)

ジセレカは同じく関節リウマチに使用するJAK阻害薬(過去10年間に薬価収載された薬理作用類似薬)の平均1日薬価に合わせて算出されました。

算定方式は類似薬効比較方式(Ⅱ)です。

 

特に加算はなく、最終的な薬価は以下の通りです。

 

  • ジセレカ錠100mg:2,550.90円
  • ジセレカ錠200mg:4,972.80円(1日薬価:4,972.80円)

 

ピーク時の予測販売金額は258億円です。

 

作用機序や類薬(4製品)との違い・比較については以下の記事で解説しています。

ジセレカ(フィルゴチニブ)の作用機序【関節リウマチ/潰瘍性大腸炎】

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ゼジューラ:類似薬効比較方式(Ⅰ)(リムパーザ)

ゼジューラは同じく卵巣がんに使用するPARP阻害薬のリムパーザ(オラパリブ)の1日薬価に合わせて算定されました。

算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。

 

こちらも特に加算はなく、最終的な薬価は以下の通りです。

 

  • リムパーザ錠150mg:5,185.10円(1日薬価:20,740.40円)
  • ゼジューラカプセル100mg:10,370.20円(1日薬価:20,740.40円)

 

ピーク時の予測販売金額は196億円です。

 

作用機序やリムパーザとの適応上の違い等については以下の記事で解説しています。

ゼジューラ(ニラパリブ)の作用機序【卵巣がん】

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ゼプリオンTRI:規格間調整【加算あり】

ゼプリオン水懸筋注は4週に1度の投与が必要でしたが、ゼプリオンTRI水懸筋注は12週に1度の投与で治療効果が期待できます。規格間比を考慮し、薬価が算定されました。

算定方式は規格間調整です。

 

また、規格間調整のみによる新薬の薬価算定の特例(A=5%)が加算されていますね!

 

  • ゼプリオンTRI水懸筋注175mgシリンジ:64,540円
  • ゼプリオンTRI水懸筋注263mgシリンジ:84,829円
  • ゼプリオンTRI水懸筋注350mgシリンジ:102,748円
  • ゼプリオンTRI水懸筋注525mgシリンジ:134,858円(1日薬価:1,605円)

 

木元 貴祥
なお、加算の根拠は以下の通りです。投与回数の減少による医療上の有用性が高いという点ですね。

 

加算の根拠

  • 規格間調整のみによる新薬の薬価算定の特例:類似薬に比して、投与回数の減少等高い医療上の有用性を有することが、客観的に示されている。

 

ピーク時の予測販売金額は76億円です。

 

ゼオマイン:原価計算方式【加算あり】

同様の作用機序と効能・効果を有するA型ボツリヌス毒素(ボトックス)の薬価収載から20年以上を経過しています。そのため、ボトックスは薬価算定上の最類似薬には原則として該当せず、また、上肢痙縮以外にも多数の効能・効果を有することから、ゼオマインの新薬算定最類似薬はないと判断されました。

従って、原価計算方式で算定されています。

 

また、市場性加算(Ⅱ)(A=5%)が加算されていますね!最終的な薬価は以下の通りです。

 

  • ゼオマイン筋注用50単位:18,707円
  • ゼオマイン筋注用100単位:34,646円
  • ゼオマイン筋注用200単位:68,922円

 

木元 貴祥
なお、加算の根拠は以下の通りです。

 

加算の根拠

  • 市場性加算:薬事工業生産動態統計調査(出典:厚生労働省医政局経済課)では、本剤が含まれる薬効分類の市場規模は全体の0.19%と小さいため、市場性加算(Ⅱ)の要件を満たすと判断した。

 

ピーク時の予測販売金額は16億円です。

 

アキャルックス:原価計算方式【加算あり】

アキャルックスと同様の薬理作用・組成及び化学構造等を有する既収載品はないことから、新薬算定最類似薬はないと判断され、原価計算方式で算定されています。

光免疫療法といった新たな治療概念の薬剤ですね!

 

有用性加算(Ⅱ)(A=5%)先駆け審査指定制度加算(A=10%)が加算されています。加算前は250mg1瓶892,891円でしたが、15%(×1.15)の加算で1,026,825円とされました!

  • アキャルックス点滴静注250mg:1,026,825円

 

木元 貴祥
なお、加算の根拠は以下の通りです。先駆け審査指定制度の対象品ですが、臨床成績が限定的のため10%の加算に留まっています。

 

加算の根拠

  • 有用性加算:本剤は、EGFR選択的に腫瘍細胞に結合し、レーザ光で励起した感受性物質が腫瘍細胞をネクローシスさせる新規作用機序医薬品であり、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)を適用することが妥当と判断した。
  • 先駆け審査指定制度加算:本剤は先駆け審査指定制度の指定を受けており、先駆け審査指定制度加算の要件を満たす一方で、海外臨床試験成績が延べ39例、国内臨床試験成績が3例に限られている等、得られた成績が限定的であることから、加算率は10%が妥当であると判断した。

 

ピーク時の予測販売金額は38億円です。

 

ユニークな作用機序ですので、是非以下の記事をチェックしてみてください☆

アキャルックス(セツキシマブ サロタロカン)の作用機序・光免疫療法【頭頸部】

続きを見る

 

ブコラム:類似薬効比較方式(Ⅰ) (ミダフレッサ)【加算あり】

ブコラムは同じくてんかん重積状態に使用し、同様の有効成分(ミダゾラム)であるミダフレッサの1日薬価に合わせて算定されました。

算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。

 

また、ミダゾラムとして初の頬粘膜投与製剤のため、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)市場性加算(Ⅰ)(A=10%)が加算されています。外国平均価格調整もあり、最終的には以下の薬価に決定しました。

 

  • ミダフレッサ静注0.1%:3,392.00円(1日薬価:1,273.90円)
  • ブコラム口腔用液2.5mg:1,125.80円
  • ブコラム口腔用液5mg:1,977.80円(1日薬価:1,977.80円)
  • ブコラム口腔用液7.5mg:2,750.00円
  • ブコラム口腔用液10mg:3,474.60円

 

木元 貴祥
なお、加算の根拠は以下の通りです。

 

加算の根拠

  • 有用性加算:ミダゾラムの頬粘膜投与は、静脈確保が困難な場合や医療機関外でけいれん発作が生じた場合においててんかん重積状態を頓挫させる標準的な
    治療法としてガイドラインに記載があることから、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)を適用することが妥当と判断した。
  • 市場性加算:本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、加算の要件を満たす。ただし、効能・効果が同一の医薬品が既に薬価収載されていることから、限定的な評価とし、市場性加算(Ⅰ)(A=10%)を適用することが適当と判断した。

 

ピーク時の予測販売金額は46百万円です。

 

疾患解説と共に作用機序について以下の記事で解説しています。

ブコラム口腔用液(ミダゾラム)の作用機序・特徴【てんかん】

続きを見る

 

エクロック:原価計算方式

エクロックと同様の効能・効果を有するボトックス(A型ボツリヌス毒素)は組成・化学構造や投与形態・剤形・用法が異なること、また同様の薬理作用を有するプロ・バンサイン錠(プロパンテリン)の効能・効果は「多汗症」のためエクロックと異なります。そして両薬剤共に薬価収載は10年以上前のため、薬価算定上の最類似薬はないと判断されました。

従って、算定方式は原価計算方式です。

 

特に加算等はなく、以下の薬価に決定しています。

  • エクロックゲル5%1g:243.70円

 

ピーク時の予測販売金額は38億円です。

 

以下の記事では作用機序・エビデンスについて解説しています。

エクロックゲル(ソフピロニウム)の作用機序・特徴【腋窩多汗症】

続きを見る

 

あとがき

木元 貴祥
今回は加算ありの製品が多かったですね。9製品中5製品が加算対象です!

 

そんな中でも有用性加算の対象とされている

は注目したいところです。

 

リベルサスは国内初の経口GLP-1アナログ製剤ですので、期待されているところです!是非チェックしてみてくださいね。

リベルサス(経口のセマグルチド)の作用機序と特徴【糖尿病】

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以上、今回は2020年11月18日に薬価収載された新薬9製品についてご紹介しました!

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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