1.中枢神経系

アジョビ(フレマネズマブ)の作用機序【片頭痛の予防】

2021年6月23日、「片頭痛発作の発症抑制」を効能・効果とするアジョビ(フレマネズマブ)が承認されました!

大塚製薬|ニュースリリース

基本情報

製品名 アジョビ皮下注225mgシリンジ
アジョビ皮下注225mgオートインジェクター
一般名 フレマネズマブ
製品名の由来 特になし
製造販売 大塚製薬(株)
効能・効果 片頭痛発作の発症抑制
用法・用量 通常、成人にはフレマネズマブとして4週間に1回225mgを皮下投与する、
又は12週間に1回675mg を皮下投与する。
収載時の薬価 41,356円

2022年6月15日にオートインジェクター製剤が承認されました。⇒ニュースリリース

 

アジョビは海外では既に「Ajovy」の製品名で承認・販売されている抗CGRP抗体製剤ですね!

CGRP:Calcitonin Gene-related Peptide(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)

 

同様の作用機序を有する薬剤として、2021年に先行してエムガルティ(ガルカネズマブ)が承認されています。また、アジョビと同日、CGRP関連薬のアイモビーグ(エレヌマブ)も承認されました。

エムガルティ(ガルカネズマブ)の作用機序:アジョビ・アイモビーグとの違い【片頭痛】

続きを見る

 

片頭痛予防はこれまでカルシウム拮抗薬や抗てんかん薬の連日投与が基本でした。

 

木元 貴祥
アジョビは1か月もしくは3か月に1度の皮下投与で予防効果を発揮すると期待されていますよ。

 

今回は片頭痛とアジョビ(フレマネズマブ)の作用機序について紹介していきます。

 

片頭痛とは

片頭痛は日本人の約10%(約1000万人)に認められる疾患です。

年代としては20歳~40歳代、性別は女性に多いとされています(男:女=1:4)。

 

もしかしたら今ご覧の方々でも経験されたことがあるかもしれません。

 

症状としては

  • ズキズキと脈打つような痛み
  • 頭の片側に急に起こる
  • 一度発症すると4~72時間くらい持続する

が特徴的です。

 

木元 貴祥
その他にも吐き気や嘔吐を伴うこともあります。

 

人によっては前兆症状として

  • 目のちらつき(キラキラした感じ)
  • 視野が狭くなる
  • しびれ
  • 言語障害

といった症状が現れることもあります。

 

片頭痛を発症しやすい要因として、

  • ストレス
  • 睡眠不足
  • 高血圧
  • ホルモンバランスの乱れ

などが知られていますね。

 

片頭痛の原因:三叉神経血管説

片頭痛の原因は、明確には解明されていませんが、

  • 血管説(セロトニン説)
  • 神経説
  • 三叉神経血管説

などが提唱されています。1)

 

最近では、最も有力なのは「三叉神経さんさしんけい血管説」と言われています。

 

木元 貴祥
三叉神経は顔面周辺に存在している、脳神経の中でも最も大きい神経です。

 

何らかの原因で三叉神経が刺激されると、「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」などの血管作動性物質が分泌されることが知られています。

 

CGRPは血管拡張作用がある物質で、血管のCGRP受容体に作用すると、血管の過度な拡張によって周囲の神経が圧迫されて痛みを生じます。

その他にもCGRPは炎症反応を増強させたり、痛みを増強させる作用もあるため、これらの作用によって片頭痛が引き起こされます。

片頭痛の発症と三叉神経血管説:CGRPが関与している

 

このように血管の過度な拡張と炎症反応によって片頭痛が生じると考えられています。

 

片頭痛の治療

片頭痛の治療薬には、

  • 急性期治療薬(片頭痛の治療目的)
  • 予防薬(片頭痛の予防目的)

があります。

 

急性期治療薬 (片頭痛の治療目的)

今起こっている片頭痛を速やかに消失させる目的の薬です。

 

重症度に応じて、

  • 軽度~中等度:アセトアミノフェン、NSAIDsなど
  • 中等度~重度:トリプタン製剤

の使用が推奨されています。

 

ただし、軽度~中等度の頭痛でも、アセトアミノフェンやNSAIDsの効果が無い場合、トリプタン製剤に変更することもあります。

【片頭痛】トリプタン製剤の作用機序と薬剤一覧まとめ比較・使い分け

続きを見る

 

吐き気や嘔吐を併発している場合、制吐薬(プリンペランやナウゼリン等)を併用します。

 

予防薬 (片頭痛の予防目的)

片頭痛発作が月に2回以上または6日以上ある場合、予防療法が行われることがあります。1)

 

木元 貴祥
片頭痛の症状が無い時に、原則、毎日服用することで発症を予防していきます。

 

主に使用される薬剤は以下です。

  • カルシウム拮抗薬
  • 抗てんかん薬
  • β遮断薬
  • 抗うつ薬
  • 漢方薬

 

今回ご紹介するアジョビは1か月もしくは3か月毎の皮下注投与で片頭痛の発症予防効果が期待されている薬剤です!新たな治療選択肢として期待できますね。

 

類薬のエムガルティ(ガルカネズマブ)は既にガイドラインにも掲載されているため、アジョビも同様になると予想されます。2)

エムガルティ(ガルカネズマブ)の作用機序:アジョビ・アイモビーグとの違い【片頭痛】

続きを見る

 

それではアジョビの作用機序について解説していきます。

 

アジョビ(フレマネズマブ)の作用機序

アジョビは片頭痛の発症に関与していると考えられているCGRPを選択的に阻害する抗CGRP抗体製剤です。

CGRP:Calcitonin Gene-related Peptide(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)

アジョビ(フレマネズマブ)の作用機序:抗CGRPモノクローナル抗体

 

CGRPの働きが阻害されることで三叉神経付近の過度な血管拡張・炎症が抑制され、片頭痛の発症を予防すると考えられています。

 

副作用

1%以上に認められる副作用として、注射部位疼痛(21.9%)、注射部位硬結(19.3%)、注射部位紅斑(17.7%)、注射部位反応(そう痒感、発疹等)などが報告されています。

 

木元 貴祥
注射部位の副作用については、皮下注製剤ですのである程度は仕方ないですね。

 

重大な副作用として、

  • 重篤な過敏症反応(頻度不明)

が挙げられていますので特に注意が必要です。

 

用法・用量、在宅自己注射

通常、成人にはフレマネズマブとして4週間に1回225mgを皮下投与、または12週間に1回675mg を皮下投与します。

 

木元 貴祥
3か月に一度の投与はいいですね!

 

また、アジョビは「4週間に1回投与の場合は本剤投与開始後3か月、12週間に1回投与の場合は本剤投与開始後6か月を目安に治療上の有益性を評価して症状の改善が認められない場合には、本剤の投与中止を考慮すること。」とされていますので、漫然とした投与には注意が必要です。

 

2022年6月にはオートインジェクター製剤が承認され、2022年11月16日から在宅自己注射が可能となりました!

 

木元 貴祥
在宅自己注射が可能になったのは大きいですね♪

 

収載時の薬価

収載時(2021年8月12日)の薬価は以下の通りです。

  • アジョビ皮下注225mgシリンジ:41,356円

 

算定根拠等については以下をご確認ください。

【新薬:薬価収載】15製品+再生医療等製品(2021年8月12日)

続きを見る

 

まとめ・あとがき

アジョビはこんな薬

  • 片頭痛の発症を予防する
  • CGRPを選択的に阻害する抗CGRP抗体製剤
  • 月に1回もしくは3か月に1回の皮下注投与

 

これまで片頭痛の発症予防はカルシウム拮抗薬や抗てんかん薬の連日投与が基本でした。

 

アジョビはCGRP関連抗体薬の中では最大の3か月に1度の投与で発症が予防できますので、患者さんにとってはより治療が行いやすくなると思います。

 

片頭痛の代表的な急性期治療薬であるトリプタン製剤については以下の記事で作用機序や一覧表を作成していますので、併せてご覧くださいませ。

【片頭痛】トリプタン製剤の作用機序と薬剤一覧まとめ比較・使い分け

続きを見る

 

以上、今回は片頭痛とアジョビ(フレマネズマブ)の作用機序について紹介しました!

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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