12.悪性腫瘍

ヴァイトラックビ(ラロトレクチニブ)の作用機序【NTRK陽性の固形がん】

2021年3月23日、「NTRK陽性の固形がん」を対象疾患とする新規TRK阻害薬のヴァイトラックビ(ラロトレクチニブ)が承認されました!

バイエル薬品|ニュースリリース

基本情報

製品名ヴァイトラックビカプセル25mg/100mg
ヴァイトラックビ内用液20mg/mL
一般名ラロトレクチニブ
製品名の由来Vitality(活力)+ TRK(標的キナーゼ)
製造販売バイエル薬品(株)
効能・効果NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がん
用法・用量1日2回経口投与(記事内参照
収載時の薬価薬価未収載

 

同様の疾患・作用機序としてはロズリートレク(エヌトレクチニブ)がありますね。

ロズリートレク(エヌトレクチニブ)の作用機序【NTRK陽性の固形がん/ROS1陽性の肺がん】

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木元 貴祥
最近ではがんの臓器横断的に使用できる薬剤が次々に承認されています。

 

臓器横断的な承認はMSI-Highの固形がん(成人)を対象にしたキイトルーダが初ですが、NTRK陽性の固形がんを対象としたロズリートレクが2製品目、ヴァイトラックビが3製品目です。

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の作用機序【消化器がん/MSI-High固形がん】

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今回はNTRK融合遺伝子や、ヴァイトラックビ(ラロトレクチニブ)の作用機序・エビデンスについて解説しています。

 

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NTRK遺伝子とTRKについて

木元 貴祥
ちょっとマニアックな話になってしまいますが、簡単に紹介しますね。

 

神経系細胞の増殖や記憶の定着等を担う受容体としてTRKトレック(トロポミオシン受容体キナーゼ:tropomyosin receptor kinase)A/B/Cと呼ばれるタンパク質が知られており、これに増殖因子が結合することで神経系細胞の増殖が促されます。1)

 

TRKはNTRKエヌトレック(神経栄養受容体チロシンキナーゼ:neurotrophic tyrosine kinase)と呼ばれる遺伝子が転写・翻訳されることで合成されます。1)

 

参考

  • 転写:遺伝子(DNA)からmRNAを合成する過程
  • 翻訳:mRNAからタンパク質を合成する過程

 

またNTRK遺伝子とTRKには以下の3種類が存在しています。

  • NTRK1遺伝子⇒TRKA
  • NTRK2遺伝子⇒TRKB
  • NTRK3遺伝子⇒TRKC

NTRK遺伝子とTRKとは

 

木元 貴祥
このように神経系の細胞増殖に関与しているのがNTRK遺伝子とTRKですね。

 

NTRK融合遺伝子とは?

では続いて、NTRK遺伝子が異常になってしまう「NTRK融合遺伝子」について解説します。

 

何らかの原因でNTRK遺伝子とその他の遺伝子が転座(ひっくり返ってくっつく)してしまうことがあり、この結果、融合してできる異常な遺伝子を「NTRK融合遺伝子」と呼んでいます。

 

NTRK融合遺伝子から転写・翻訳して合成される異常なTRK融合タンパクは発がんの原因になったり、増殖因子がなくてもがんの増殖活性を促したりします。2)

NTRK融合遺伝子とがんの増殖機構

 

NTRK1融合遺伝子からはTRKA融合タンパク、NTRK2融合遺伝子からはTRKB融合タンパク、NTRK3融合遺伝子からはTRKC融合タンパクがそれぞれ合成されます。

 

NTRK融合遺伝子が関与するがん

NTRK融合遺伝子は全がんの1%程とされていますので、非常に稀ですが、主ながんの種類には以下があります。2)

  • 虫垂がん
  • 乳がん
  • 胆管がん
  • 大腸がん
  • 消化管間質腫瘍(GIST)
  • 乳児型線維肉腫
  • 肺がん
  • 悪性黒色腫
  • 膵臓がん
  • 甲状腺がん

 

木元 貴祥
今回ご紹介するヴァイトラックビはNTRK融合遺伝子を認める切除不能な固形がんに対して使用が見込まれていますね。

 

ヴァイトラックビ(ラロトレクチニブ)の作用機序:TRK阻害

ヴァイトラックビはTRK(TRKA/TRKB/TRKC)融合タンパクを選択的に阻害する薬剤です!

 

下図のようにTRK融合タンパクを阻害することでがん細胞の増殖を抑制すると考えられています。

ヴァイトラックビ(ラロトレクチニブ)の作用機序:TRK阻害

 

NTRK融合遺伝子陽性固形がんのエビデンス紹介

根拠となった臨床試験には以下があります。

  • LOXO-TRK-14001試験:成人を対象とした第Ⅰ相試験
  • NAVIGATE試験:成人・青年期を対象とした第Ⅱ相試験
  • SCOUT試験:小児を対象とした第Ⅰ/Ⅱ相試験

 

上記試験はまとめて論文で報告されていて、主要評価項目の奏効率*は75%(95%CI:61~85%)とされていますね。3)

*奏効率:がんが30%以上縮小した患者さんの割合

 

副作用

5%以上に認められる副作用として、悪心(10.6%)、便秘(10.1%)、味覚異常、嘔吐、下痢、筋肉痛、疲労(14.3%)、浮腫、頭痛、発疹、体重増加などがあります。

重大な副作用としては、

  • 肝機能障害:ALT増加(28.0%)、AST増加(23.3%)等
  • 骨髄抑制:好中球減少(10.6%)、白血球減少(9.0%)、貧血(7.9%)、血小板減少(4.2%)、リンパ球減少(3.7%)等
  • 中枢神経系障害:浮動性めまい(17.5%)、錯感覚(2.6%)、歩行障害(1.6%)、運動失調(0.5%)、認知障害(0.5%)等

が挙げられていますので特に注意が必要です。

 

用法・用量

成人と小児で用量は異なりますが、いずれも1日2回経口投与です。

対象用量用法
成人1回100mg1日2回経口投与
小児1回100mg/m2(体表面積)
※1回100mgを超えないこと

いずれも患者の状態により適宜減量

 

木元 貴祥
ちなみに、類薬のロズリートレクは1日1回経口投与ですね。

 

収載時の薬価

現時点では薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

ヴァイトラックビはこんな薬

  • TRK(TRKA/TRKB/TRKC)融合タンパクを選択的に阻害する
  • NTRK融合遺伝子陽性の固形がんに対して臓器横断的に使用できる
  • 1日2回経口投与

 

NTRK融合遺伝子陽性の固形がんに対しては2019年に初の臓器横断的に使用できるロズリートレクが登場しました。ヴァイトラックビは同じ疾患に使用しますが、治療選択肢が増えることは朗報ではないでしょうか。

ロズリートレク(エヌトレクチニブ)の作用機序【NTRK陽性の固形がん/ROS1陽性の肺がん】

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今後は両薬剤の使い分け等が検討されれば興味深いですね。まずはどちらかを先に使い、耐性が認められればもう一方を使用するといった使われ方をされると思われます。

 

今回はNTRK融合遺伝子とヴァイトラックビ(ラロトレクチニブ)の作用機序やエビデンスについて解説しました!

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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