6.腎・泌尿器系

ダーブロック(ダプロデュスタット)の作用機序・特徴【腎性貧血】

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2020年6月29日、「腎性貧血」を対象疾患とするダーブロック(ダプロデュスタット)が承認されました!

グラクソ・スミスクライン|ニュースリリース

基本情報

製品名ダーブロック錠1mg/2mg/4mg/6mg
一般名ダプロデュスタット
製品名の由来特になし
製薬会社製造販売:グラクソ・スミスクライン(株)
販売:協和キリン(株)
効能・効果腎性貧血
用法・用量1日1回経口投与(詳細は記事内参照
収載時の薬価1mg:105.40円
2mg:185.80円
4mg:327.40円
6mg:456.10円

 

ダーブロックはHIFヒフ活性化薬(HIF-PH阻害薬)に分類されていて、2019年に登場したエベレンゾ(ロキサデュスタット)に次ぐ製品ですね。同日、類薬のバフセオ(バダデュスタット)も承認されています。

エベレンゾ(ロキサデュスタット)の作用機序:類薬との比較・違い【腎性貧血】

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エリスロポエチン(EPO)製剤であるネスプ(一般名:ダルベポエチン アルファ)等に次ぐ製品ですね。

 

木元 貴祥
ですので「ポストEPO製剤」、「ポストネスプ」とも呼ばれていますよ!

 

また、HIFは2019年のノーベル医学生理学賞の受賞(「細胞の低酸素応答の仕組みの解明」が授賞理由)にも繋がっていますね。すごい!

 

今回は慢性腎臓病(CKD)と腎性貧血、そしてダーブロック(ダプロデュスタット)の作用機序についてご紹介します。

 

慢性腎臓病(CKD)とは

慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)は、腎障害が慢性的に持続する疾患の全体を意味するものです。

以下の場合、CKDと確定診断されます。

  • 尿異常(蛋白尿)、画像診断・血液所見・病理所見等で腎障害の存在が明らか
  • GFRが60(mL/分/1.73㎡)未満

※GFR:「糸球体ろ過量」のことで、腎機能の指標です。

 

CKDのリスク因子としては、以下が知られています。

 

また、CKDは初期にはほとんど無症状のため徐々に腎機能が低下していきます。

腎臓は老廃物の排泄骨代謝造血器機能調節といった様々な役割を担っています。

 

そのためCKDによって腎機能低下が進行してしまうと、

といった様々な症状が現れます。

 

木元 貴祥
従って、早期からリスク因子である原疾患の治療、症状に対する対処療法と共に、生活習慣改善が行われます。

 

腎性貧血とは

CKDの症状の一つである腎性貧血について解説します。

体の中で“はたらく細胞”の一つに「赤血球」が知られており、主に酸素の運搬二酸化炭素の回収を担っている細胞です。

 

赤血球は造血幹細胞⇒赤芽球を経て産生されますが、そこに関与する物質として「エリスロポエチン(EPO)」があります。

EPOは腎臓で産生され、造血幹細胞の「エリスロポエチン受容体」に作用することで赤芽球への成熟・分化を促進させます。

エリスロポエチンの作用

 

また、赤血球の内部には酸素運搬に関与するヘモグロビンが存在していますが、これはを中心に含んだタンパク質です。

 

鉄が食事等で体内に吸収されると、一部は血中でトランスフェリンと呼ばれるタンパク質と結合して存在します(血清鉄)。

赤血球の成熟過程では、血中のトランスフェリン(血清鉄)を取り込むことでヘモグロビンを構成していきます。

 

しかし、CKDでは腎臓の機能が低下しているためEPOの産生も低下しています。

そのため造血幹細胞から赤芽球への分化が低下し、結果的に赤血球の数が減少してしまい、貧血の症状が現れます。

腎不全(CKD)によるEPO低下

 

即ち、腎臓が原因で貧血を生じますので「腎性貧血」と呼んでいます。

 

腎性貧血の治療

腎性貧血は大まかに、透析の必要性に応じて

  • 保存期:透析必要無し
  • 透析期:透析の必要あり

があります。

 

いずれの場合にもESA(赤血球造血刺激因子)製剤であるエリスロポエチン(EPO)製剤の

等が主流で使用されていました。

ネスプ(ダルベポエチン)の作用機序とバイオセイム・ABS【CKD・腎性貧血】

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今回ご紹介するダーブロックは「透析期」と「保存期」、共に使用可能となる見込みです!

 

類薬のエベレンゾは現状、透析期のみです。(保存期は申請中)

エベレンゾ(ロキサデュスタット)の作用機序:類薬との比較・違い【腎性貧血】

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木元 貴祥
ではここからダーブロックが関与するHIFについてご紹介します☆

 

HIF(低酸素誘導因子)とは

アンデス高地に住んでいる人々は、標高が高いため酸素濃度の低い生活環境で暮らしていますが、この地方の健常成人男性のヘモグロビン値は19.2g/dLと、我々日本人(成人男性で15g/dL前後)と比較しても高値であることが知られています1)

これは、酸素がより少ない状況下でも、全身の細胞に何とか酸素を行き渡らせようとするメカニズムが働いているためです。

 

このメカニズムを担っているのがHIFヒフです。

HIF(低酸素誘導因子:hypoxia inducible factor)は、細胞の酸素供給が低下した場合(低酸素状態)に誘導・活性化されるといった特徴を有したタンパク質(転写因子)です。

 

HIFにはαとβがあり、通常の酸素状態でも産生されています。

しかし、通常の酸素状態ではすぐに「HIF-PH(HIFプロリン水酸化酵素:HIF-Prolyl Hydroxylase)」によって速やかに分解されてしまうため、活性化することはありません。

 

一方、高地で酸素濃度の薄い場所や、出血などで細胞が低酸素状態になった場合、HIF-PFの働きが抑制されるため、HIFは分解されなくなります。

その後、HIF-αはHIF-βと複合体を形成してDNAの転写を活性化させます。

 

HIFによって転写が活性化されると、

  • エリスロポエチン(EPO)の産生促進
  • 鉄の吸収促進
  • 赤血球へのトランスフェリンの取り込み促進

によって赤血球の分化・成熟が促進されます。

低酸素状態とHIF

 

このように低酸素状態であっても生体の恒常性を維持(ホメオスタシス)するメカニズムの一つがHIFですね。

 

ダーブロック(ダプロデュスタット)の作用機序・特徴:HIF活性化

ダーブロックはHIF活性化薬(HIF-PH阻害薬)に分類されている薬剤です。

HIF-PHを選択的に阻害することでHIFの活性を促します。

 

その結果、EPOの産生促進、鉄の吸収促進、トランスフェリンの取り込み促進等によって赤血球の成熟・分化が促進されると考えられます。

ダーブロック(ダプロデュスタット)の作用機序・特徴:HIF活性化

 

このように通常の酸素状態であってもHIFが活性化することで赤血球の数が回復する結果、貧血の症状軽減に繋がります。

 

副作用

1%未満に認められる副作用として、網膜出血、過敏症(発疹、皮膚炎、蕁麻疹)、高血圧が報告されています。

 

重大な副作用としては、

  • 血栓塞栓症(0.8%):脳梗塞(0.3%)、肺塞栓症(0.3%)、網膜静脈閉塞(0.3%)、深部静脈血栓症(0.3%)、バスキュラーアクセス血栓症(シャント閉塞等)(頻度不明)

があげられていますので特に注意が必要です。

 

用法・用量

保存期(ESA未治療・切り替え)と透析期で用法・用量が設定されています。

 

以下の表にまとめてみましたのでご参考にしてみてください。

用法・用量開始用量最高用量
保存期
(ESA製剤未治療)
2mg又は
4mg
24mg
保存期
(ESA製剤からの切り替え)
4mg
透析期

いずれもダプロデュスタットとして上記用量を1日1回経口投与

 

収載時の薬価

収載時(2020年8月26日)の薬価は以下の通りです。

 

  • ダーブロック錠1mg:105.40円
  • ダーブロック錠2mg:185.80円
  • ダーブロック錠4mg:327.40円
  • ダーブロック錠6mg:456.10円(1日薬価:457.00円)

 

算定根拠については以下の記事で解説しています。

【新薬:薬価収載】13製品(2020年8月26日)

続きを見る

 

まとめ・あとがき

ダーブロックはこんな薬

  • HIF活性化薬(HIF-PH阻害薬)
  • HIFの量が増加することでEPO産生促進、鉄の吸収や取り込み促進を促す
  • 経口投与で治療が可能
  • 保存期・透析期で使用可能

 

これまで腎性貧血に対しては、注射のエリスロポエチン(EPO)製剤である

等が主流で使用されていました。

ネスプ(ダルベポエチン)の作用機序とバイオセイム・ABS【CKD・腎性貧血】

続きを見る

 

ダーブロックは経口投与可能なHIF活性化薬(HIF-PH阻害薬)といった新規作用機序を有していることから、利便性の向上やEPO製剤で効果不十分だった患者さん等に対して期待されています。

 

類薬のエベレンゾは現状、透析期のみですが、既に保存期に対して適応拡大申請が行われています。現在、様々なHIF活性化薬の開発が進行中ですので、腎性貧血以外の疾患に対しても期待されるところですね。

 

エベレンゾ、バフセオ、ダーブロック、エナロイの違い・比較については以下の記事で考察していますので、是非ご覧くださいませ☆

エベレンゾ(ロキサデュスタット)の作用機序:類薬との比較・違い【腎性貧血】

続きを見る

 

以上、今回はCKDと腎性貧血、そしてダーブロック(ダプロデュスタット)の作用機序についてご紹介しました!

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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