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ザバクサ配合点滴静注(セフトロザン/タゾバクタム)の作用機序と副作用【細菌感染】

更新日:

厚労省の薬食審医薬品第二部会は2018年11月29日、「膀胱炎、腎盂腎炎、腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎、肝膿瘍」を適応症とするザバクサ配合点滴静注用(一般名:セフトロザン硫酸塩/タゾバクタムナトリウム)の承認が了承されました!

現時点では未承認のためご注意ください。

製薬会社

製造販売元(仮):MSD(株)

 

なお、適応菌種は以下の通りです。

  • 本剤に感性のレンサ球菌属、大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、プロテウス属、緑膿菌

 

セフトロザンはセフェム系の新規抗菌薬で、タゾバクタムはゾシンにも含まれているβ-ラクタマーゼ阻害薬です。

今回は細菌とザバクサ配合点滴静注用の作用機序についてご紹介します。

 

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細菌の構造と分類(グラム染色)

細菌はヒトを含む真核生物と比較して非常に単純な構造から成り立っています。

主には、鞭毛、莢膜、細胞壁、細胞膜、細胞質などから構成されており、DNAは核膜に覆われていません。(真核生物のDNAは核膜に覆われている)

 

特に細胞壁の合成では「ペニシリン結合タンパク質(PBP)」が関与しており、細菌の細胞壁内に存在していますが、これはヒトには存在していません。

 

また、細菌を分類する手法としてグラム染色が知られており、以下に大別されます。

  • グラム陽性菌(例:黄色ブドウ球菌、MRSA
  • グラム陰性菌(例:大腸菌)

 

これは細胞壁の厚さや性質による分類法です。

グラム陽性菌では細胞壁が厚いため色素が抜けずに染色されたままになります。

一方、グラム陰性菌は細胞壁が薄いため、染色しても色素が抜けてしまいます。

 

臨床的にもグラム陽性か陰性かによって薬剤の感受性や耐性機序等が異なるため、重要な分類法となります。

 

セフェム系抗菌薬と耐性機序(β-ラクタマーゼ)

細菌感染に使用する代表的な抗菌薬(抗生物質)としてセフェム系抗菌薬があります。

 

現在使用されているセフェム系抗菌薬には第一世代から第四世代まであり、それぞれグラム陽性/陰性菌に対する効きやすさが異なっています。

  • グラム陽性菌:第一世代>第二世代>第三世代
  • グラム陰性菌:第三世代>第二世代>第一世代

第四世代はグラム陽性/陰性問わず、幅広い抗菌スペクトラムを有しています。

 

全てが上記通りではなく、個々の薬剤によって特徴が異なりますので、大まかな特徴としてご認識いただければと思います。

 

今回ご紹介するザバクサ配合点滴静注用の有効成分であるセフトロザンは第四世代のセフェム系抗菌薬に分類されています。

 

また、セフェム系抗菌薬の耐性に関わる因子として「β-ラクタマーゼ」が知られています。

これは細菌が産生する物質で、ペニシリン系抗菌薬やセフェム系抗菌薬を分解して活性を低下させてしまいます(耐性の獲得)。

 

ザバクサ配合点滴静注用の作用機序と特徴

ザバクサ配合点滴静注用は以下を配合した薬剤です。

  • セフトロザン:第四世代のセフェム系抗菌薬
  • タゾバクタム:β-ラクタマーゼ阻害薬

 

セフェム系抗菌薬のセフトロザンは細菌の細胞壁合成に関与しているペニシリン結合タンパク質(PBP)を阻害することで細胞壁合成を阻害します。

またセフェム系抗菌薬の耐性に関与しているβ-ラクタマーゼをタゾバクタムが阻害します。

 

以上より、β-ラクタマーゼを産生している細菌に対してもセフトロザンの活性が維持されて抗菌作用を発揮すると考えられます。

 

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エビデンス紹介:複雑性尿路感染症(ASPECT- cUTI試験)

根拠となった臨床試験は以下の2つがあります。

  1. ASPECT- cIAI試験1):腹腔内感染症に対するエビデンス(メトロニダゾール併用)
  2. ASPECT- cUTI試験2):複雑性尿路感染症に対するエビデンス

 

今回は複雑性尿路感染症に対するエビデンスのASPECT- cUTI試験2)について紹介します。

 

尿路感染症は時に生命の危機にもなりえる感染症ですし、院内感染では敗血症を合併して重篤化の恐れもあります。

耐性菌がしばしば問題となりますので、新規の抗菌薬の開発が望まれていました。

 

本試験は複雑性下部尿路感染症または腎盂腎炎の患者さんを対象に、クラビット(一般名:レボフロキサシン)に対するザバクサ配合点滴静注用の非劣性を検証した第Ⅲ相臨床試験です。

投与は共に7日間行われました。

 

本試験の主要評価項目は、「治療終了後5~9日の細菌消失率と臨床的治癒率」の複合評価項目とされました。なお、非劣性マージンは10%とされました(群間差の95%CIの下限値が-10%より大きい場合に非劣性が証明)。

試験群クラビット群ザバクサ群
主要評価項目
(複合評価項目)
68.4%76.9%
群間差8.5% [95%CI:2.3-14.6]
非劣性が証明
優越性も証明
ESBL*産生菌に対する
複合評価項目
35.1%62.3%
群間差27.2% [95%CI:9.2-42.9]
有害事象発現率34.4%34.7%

*ESBL:Extended Spectrum β-lactamase(基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ)⇒ESBL産生菌はβ-ラクタム系(ペニシリン系/セフェム系)抗菌薬のみならず、アミノグリコシド系抗菌薬やフルオロキノロン系抗菌薬にも耐性を示す多剤耐性菌

 

このようにクラビットに対してザバクサでは非劣性だけでなく、優越性も確認されています。

またESBL産生菌に対してもザバクサの有効性が示唆されていますね。

 

1)ASPECT- cIAI試験:Clin Infect Dis. 2015 May 15; 60(10): 1462–1471.
2)ASPECT- cUTI試験:Lancet. 2015 May 16;385(9981):1949-56.

 

ザバクサ配合点滴静注用の副作用

後日更新予定です。

前述の臨床試験では主な副作用として頭痛、便秘、悪心、下痢などが報告されています。

 

ザバクサ配合点滴静注用の用法・用量

通常、成人には1回を1日3回60分かけて点滴静注します。

なお、腹膜炎、腹腔内膿傷、胆嚢炎、肝膿傷に対しては、メトロニダゾール注射液と併用することとされています。

 

ザバクサ配合点滴静注用の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

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まとめ・あとがき

ザバクサはこんな薬

  • 第四世代セフェム系抗菌薬のセフトロザンとβ-ラクタマーゼ阻害薬のタゾバクタムを配合
  • 腹腔内感染症と複雑性尿路感染症に効果が期待される

 

第四世代のセフェム系抗菌薬とβ-ラクタマーゼ阻害薬の配合剤はザバクサ配合点滴静注用が初です。

セフトロザンはグラム陽性菌から陰性菌まで幅広く活性を示すと考えられていますので、既存薬で耐性が生じた場合などには期待できるのではないでしょうか。

 

以上、今回は細菌感染症とザバクサ配合点滴静注用の作用機序についてご紹介しました!

参考になったらシェアいただけると嬉しいです!
   

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

大阪薬科大学 卒。外資系製薬メーカー(MR)、薬剤師国家試験予備校講師、調剤薬局薬剤師を経て現在に至る。今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師です。薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。FP資格あり。

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