8.感染症

ベクルリー(レムデシビル)の作用機序・副作用【COVID-19】

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2020年5月7日、重症の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」を対象疾患とするベクルリー点滴静注液(レムデシビル)が承認されました!

同日行われた厚労省の薬食審医薬品第二部会にて審議され、承認了承後、当日中にスピード承認です。

ギリアド・サイエンシズ|ニュースリリース

基本情報

製品名ベクルリー点滴静注液100mg/点滴静注用100mg
一般名レムデシビル
製品名の由来不明
製造販売ギリアド・サイエンシズ(株)
効能・効果SARS-CoV-2による感染症
用法・用量記事内参照
収載時の薬価無償提供のため薬価未収載

※効能又は効果に関連する注意(抜粋):臨床試験等における主な投与経験を踏まえ、現時点では原則として、酸素飽和度94%(室内気)以下、又は酸素吸入を要する、又は体外式膜型人工肺(ECMOエクモ)導入、又は侵襲的人工呼吸器管理を要する重症患者を対象に投与を行うこと。

 

2019年末頃から中国を中心に世界的なパンデミックを引き起こした新型コロナウイルス(SARS-CoV-2:Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2)に対する初の治療薬ですね!

 

米国FDAは2020年5月1日に重症の患者さんに対してベクルリーの緊急使用を許可しています。日本でも同じく、原則として重症の患者さんへの使用に限られます。

【参考】FDA|Coronavirus (COVID-19) Update: FDA Issues Emergency Use Authorization for Potential COVID-19 Treatment

 

木元 貴祥
日本では米国の緊急使用を受けて、「特例承認制度」と呼ばれる制度によってベクルリーの早期申請・承認を行ったという流れです。2020年5月4日に申請して同月7日に承認、すごい早さです(笑)

 

今回は新型コロナウイルスの基本的な解説と共に、ベクルリーの作用機序・エビデンス、そして特例承認制度について解説していきます!

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とは

2019年末頃、中国の中国湖北省武漢市を中心に原因不明の肺炎ウイルスが発生しました。

 

その後、数カ月で日本を含む全世界にパンデミックを引き起こした原因ウイルスが「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」です。このウイルスによって引き起こされる疾患名として、世界保健機関(WHO) は正式名称を「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)」と発表しました。

「COVID-19」の読み方:コヴィッド・ナインティーン

 

木元 貴祥
ウイルス名がSARS-CoV-2、疾患名がCOVID-19ですね。たまに混同してしまいます(笑)

 

SARSサーズ(Severe acute respiratory syndrome coronavirus:重症急性呼吸器症候群)と言えば、2003年頃に中国を中心に流行したウイルス感染症で、この原因もコロナウイルス(SARS-CoV)でしたね。今回の新型コロナウイルスもSARS-CoVと似ていることからSARS-CoV-2と名付けられています。

 

 

症状としては無症状から風邪様症状(発熱、倦怠感、咳、味覚異常)が多く、重症化することはあまりありません。

しかし、一部、肺炎・呼吸困難・血栓症等、重症化することもあり、特に高齢者や基礎疾患(例:糖尿病心不全COPD等の呼吸器疾患)を持っている方では重症化のリスクが高いと言われています。

 

重症化の可能性や世界的なパンデミックにより、日本においてCOVID-19は2020年1月に感染症法に基づく「指定感染症」及び検疫法に基づく「検疫感染症」に指定されました。

【参考】内閣官房|新型コロナウイルス感染症の指定感染症等への指定について

 

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の増殖メカニズム

コロナウイルスの外観は「コロナ(太陽の光冠)」に似ていることからその名前が付けられています。

分類としては「一本鎖プラス鎖RNAウイルス」で、RNAをゲノムとしているウイルスですね!主にヒトの粘膜上皮細胞に感染します。

 

木元 貴祥
ウイルスの分類・・・いくつかありますが覚えていますか??特徴と代表例はこんな感じですね。1)

 

ちなみに、アデノ随伴ウイルスの仕組みを用いた治療法なんかもありますね。

ゾルゲンスマ(オナセムノゲンアベパルボベク)の作用機序・特徴【脊髄性筋委縮症】

続きを見る

 

プラス鎖というのはゲノムそのものがmRNAとして働くことが可能なもの、マイナス鎖というのはゲノムを鋳型として一旦mRNAを作るものを言います。

 

SARS-CoV-2はプラス鎖の一本鎖RNAウイルスですので、ゲノム自体がmRNAとして働き、ヒト細胞内に侵入するとすぐにウイルスタンパク質の合成が始まりますね。

 

SARS-CoV-2がヒトの粘膜上皮細胞に感染する場合、以下の図のようなプロセスで感染・増殖します。

  1. 吸着・膜融合・脱殻:ヒト細胞内に入る
  2. ゲノム(RNA)の複製とタンパク質合成:ヒト細胞内で増える
  3. 細胞からの遊離:ヒト細胞外へ出て、他の細胞に感染する

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染・増殖メカニズム

 

上記②のRNAの複製過程では、「RNA依存性RNAポリメラーゼ(別名:レプリカーゼ)」と呼ばれるウイルスタンパク質が中心を担っています。

 

ベクルリー(レムデシビル)の作用機序:RNAポリメラーゼ阻害

ベクルリーはRNA依存性RNAポリメラーゼを選択的に阻害するといった作用機序を有しています!2-3)

ウイルスのゲノム(RNA)の複製がストップすることでヒト細胞内で増殖することができなくなり、結果としてウイルスの増殖抑制効果を発揮すると考えられていますね。

ベクルリー(レムデシビル)の作用機序:RNAポリメラーゼ阻害

 

エビデンス紹介:ACTT試験、SIMPLE試験

根拠となった臨床試験の一つがACTT試験です。

全体の結果は未公表ですが、アメリカ国立衛生研究所(NIH)より予備的解析の結果が公表されていますのでその概要についてご紹介します。5)

 

本試験はSARS-CoV-2による肺炎で入院している重症患者さん(酸素飽和度(SpO2)≦94%、酸素吸入や体外式膜型人工肺(ECMOエクモ)が必要、浸潤影やラ音の確認、などの基準あり)を対象に、プラセボとベクルリーの10日間投与を比較する国際共同第Ⅲ相臨床試験です。日本も含まれています。

 

主要評価項目は「回復までの期間」とされ、レムデシビル投与群はプラセボ群に比べ31%有意に早かった(p<0.001)と報告されています。期間の中央値や死亡率については下表の通りです。

プラセボ群ベクルリー群
回復までの期間(中央値)15日11日
HR=1.31 (95%CI:1.12-1.54)
p<0.001
死亡率11.6%8.0%
p=0.059

 

木元 貴祥
死亡率は若干ベクルリー群で低そうな印象ですが、統計的には差が無かったようですね・・・。

 

また、SIMPLE試験という試験も行われていて、本試験の重症患者さんに限った結果も発表されています。6)

本報告は肺炎症状があり、酸素レベルが低下しているが、人工呼吸器などを必要としていない患者さんを対象にベクルリー5日投与群と10日投与群を比較した第Ⅲ相試験です(日本は含まれていない)。

 

主表評価項目は「14日時点での臨床的改善割合」で、結果は下表の通りでした。

ベクルリー
5日投与群
ベクルリー
10日投与群
14日時点での臨床的改善割合64.5%53.8%
p=0.16
退院した割合60.0%52.3%
p=0.44
死亡率8%11%
p=0.70

 

効果的には5日投与でも10日投与でも同程度であることが示されていますね。

 

木元 貴祥
人工呼吸器が必要のない患者さんでは5日投与でも良さそうな印象です。

 

適応患者さんの選定

上記臨床試験の結果は重症患者さんを対象としていたことから、原則、ベクルリーは重症患者さんに使用します。

 

適格基準と除外基準は以下の通りとされました。

<適格基準>

  • PCR 検査において SARS-CoV-2 が陽性
  • 酸素飽和度が 94%以下、酸素吸入又は NEWS2 スコア4以上
  • 入院中

<除外基準>

  • 多臓器不全の症状を呈する患者
  • 継続的に昇圧剤が必要な患者
  • ALT が基準値上限の5倍超
  • クレアチニンクリアランス 30 mL/min 未満又は透析患者
  • 妊婦

PMDAにおける新型コロナウイルス感染症対策に係る活動についてレムデシビル製剤の使用に当たっての留意事項について

 

副作用

肝機能障害、下痢、皮疹、腎機能障害などの頻度が高く、重篤な副作用として多臓器不全、敗血症性ショック、急性腎障害、低血圧、Infusion Reactionなどが報告されています。3-4)

 

従って、重度の腎機能障害(成人や乳児、幼児、小児はeGFRが30mL/min未満、生期産新生児(7~28日)では血清クレアチニン1mg/dL以上)では治療上の有用性が上回ると判断される場合にのみ投与することとされ、肝機能としてALT値が基準範囲上限の5倍以上の場合は投与しないことが望ましいとされています。

 

肝機能や腎機能には特に注意が必要そうですね。

 

用法・用量

下表の通り、レムデシビルとしていずれも1日1回点滴静注します。

対象投与初日投与2日目以降
成人及び体重40kg以上の小児200mg100mg
体重3.5kg以上40kg満の小児5mg/kg2.5mg/kg

 

なお、総投与期間は10日までとされています。

 

木元 貴祥
10日間の根拠は前述のACTT試験5)での投与法からですね。

 

また、用法及び用量に関連する注意として以下の記載があります。

本剤の最適な投与期間は確立していないが、目安として、侵襲的人工呼吸器管理又はECMOが導入されている患者では総投与期間は10日間までとし、侵襲的人工呼吸器管理又はECMOが導入されていない患者では5日目まで、症状の改善が認められない場合には10日目まで投与する。

 

SIMPLE試験6)では5日投与でも10日投与と同程度の治療効果が得られたことから、ECMO等が導入されていない重症患者さんでは5日投与でもOKとのことですね!

 

特例承認制度とは

今回、ベクルリーは「特例承認制度」を利用して迅速な申請・承認プロセスが行われていますが、これはどういった制度なのでしょうか?

 

通常、新薬の申請から承認までは約1年間の期間が必要で、その期間内にPMDAや厚労省による審査・審議が行われます。でも、COVID-19の場合、1年も待てませんよね・・・。

 

そこで、特例的に通常よりも簡略化した審査・審議で承認することが可能となるのが特例承認制度です!!

 

当制度は薬機法第14条の3第1項に定められている制度で、以下の2点をクリアしている場合、適応となります。(一部抜粋)

  1. 国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病のまん延その他の健康被害の拡大を防止するため緊急に使用されることが必要な医薬品であり、かつ、当該医薬品の使用以外に適当な方法がないこと。
  2. その用途に関し、外国において、販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列することが認められている医薬品であること。

 

木元 貴祥
COVID-19の場合、①は当然クリアしていますが、②は・・・・?

 

確かに米国FDAがベクルリーの使用を認めましたが、正式な承認ではなく、あくまで「緊急使用の許可」だけです。少し無理やりな気もしますが、厚労省は②にも該当すると認めたということでしょうね。

 

Lunaさんのサイト(特例承認ってなに?なぜアビガンではなくレムデシビルなの?その妥当性は?)でもアビガン(ファビピラビル)との違い等、色々考察されていましたので参考になるかと思います!是非ご参考ください。

 

本制度を利用し、ベクルリーは2020年5月4日に承認申請し、2020年5月7日に医薬品第二部会で審議され、承認了承後、同日中に承認されました!

 

木元 貴祥
すごいスピード感です(笑)

 

ただし、全例調査や文書での同意、臨床成績の提出など、いくつかの承認条件も定められていますね。

<承認条件>

  • 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
  • 本剤は、医薬品医療機器等法第 14 条の 3 第 1 項の規定に基づき承認された特例承認品目であり、現時点での使用経験が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、可能な限り本剤が投与された全症例について副作用情報等の本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。また、得られた情報を定期的に報告すること。
  • 本剤の安全性に関する追加的に実施された評価に基づき、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
  • 本剤の有効性及び安全性に係る最新の情報を、医療従事者が容易に入手可能となるよう必要な措置を講じること。
  • 本剤の投与が適切と判断される症例のみを対象に、あらかじめ患者又は代諾者に有効性及び安全性に関する情報が文書をもって説明され、文書による同意を得てから初めて投与されるよう、医師に対して要請すること。
  • 医薬品医療機器等法施行規則(昭和 36 年厚生省令第 1 号)第 41 条に基づく資料の提出の猶予期間は、承認取得から起算して 9 カ月とする。なお、現在実施中の臨床試験の成績が得られた際には速やかに当該成績を提出することとし、その他の資料についても遅くとも承認取得後 9カ月までには独立行政法人医薬品医療機器総合機構に提出すること。また、提出された資料等により、承認事項を変更する必要が認められた場合には、薬機法第 74 条の 2 第 3 項に基づき承認事項の変更を命ずることがあること。

PMDAにおける新型コロナウイルス感染症対策に係る活動についてベクルリー添付文書

 

まとめ・あとがき

ベクルリーはこんな薬

  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する初の治療薬(原則、重症患者さんへの使用に限られる)
  • RNA依存性RNAポリメラーゼを選択的に阻害することでウイルスの増殖を抑制する
  • 特例承認制度を利用して承認された(申請から3日で承認)
  • 腎機能と肝機能には特に注意が必要

 

COVID-19はワクチンや有効な治療薬も存在していません。そんな中、ベクルリーの登場は非常に朗報かと思います!

 

ただし、副作用のリスクも十分に検討されていないことに注意が必要です。また、臨床試験では重症患者さんを対象としていたため、原則、無症状や軽症の患者さんには使用できません

従って、承認されたからと言って安易な処方はできないと予想されます。

 

同様の作用機序(RNAポリメラーゼ阻害)を有する薬剤として、日本では既にインフルエンザ治療薬のアビガン(ファビピラビル)も承認されていますが、アビガンはまだCOVID-19に対する有効性が不明確です。

アビガン(ファビピラビル)の作用機序【インフルエンザ】

続きを見る

 

木元 貴祥
現在、臨床試験も進行中ですので良い結果が出ることを期待したいと思います!

 

以上、今回は国内初の新型コロナウイルス治療薬であるベクルリー(レムデシビル)の作用機序について解説しました。

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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