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イエスカルタ(アキシカブタジン シロルーセル)の作用機序・特徴【DLBCL】

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2020年3月30日、「B細胞リンパ腫」を対象疾患とするイエスカルタ(アキシカブタジン シロルーセル)の製造販売承認申請が行われました!

第一三共|ニュースリリース

現時点では未承認のためご注意ください。

基本情報

製品名イエスカルタ?
一般名アキシカブタジン シロルーセル
製品名の由来不明
製造販売第一三共(株)
効能・効果再発又は難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫?
用法・用量不明
収載時の薬価薬価未収載

 

イエスカルタはキムリアに次いで2製品目の「CAR-Tカーティー細胞(キメラ抗原受容体T細胞)療法」に分類されており、患者さん自身の“生きたT細胞”によって治療効果を発揮するといった作用機序ですね!

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今回は悪性リンパ腫の中でも「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」とイエスカルタの作用機序・エビデンス等について解説していきます。

 

悪性リンパ腫とは

造血機腫瘍の中でも、リンパ系の血球成分(例:B細胞、T細胞、NK細胞など)から発生するものを「悪性リンパ腫」と呼んでいます。

 

細かい分類は非常に多いのですが、大きく分類すると以下の2種類です。1)

  • ホジキンリンパ腫(HL:Hodgkin lymphoma)
  • 非ホジキンリンパ腫(NHL:Non Hodgkin lymphoma)

 

木元 貴祥
国内ではほとんどがNHLと言われていますね。

 

今回ご紹介するびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL:diffuse large B-cell lymphoma)もNHLの一種に分類されています。

 

また、悪性リンパ腫では、疾患の悪性度や予後の臨床分類としてアグレッシブ分類(低悪性度、中悪性度、高悪性度)が行われますが、DLBCLは「中悪性度」のアグレッシブ分類とされています。

 

そしてDLBCLの原因となるリンパ腫細胞は「B細胞」に由来していることがほとんどで、細胞膜表面には「CD19」を発現していることが知られています。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL:diffuse large B-cell lymphoma)とCD19

 

DLBCLと治療

DLBCLは発見時の進行度(限局期もしくは進行期)によって治療が若干異なりますが、基本は薬物療法です。2)

 

限局期であっても進行期であっても「R-CHOPアールチョップ療法*」を3~8回行い、場合によっては放射線と併用することもあります。

*R-CHOP療法:リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンの併用療法

 

しかし、上記の治療を行って治療効果が得られたとしても、多くの場合、再発してしまうことがあり、その後の治療選択肢は限られていました。

また初回のR-CHOP療法で抵抗性を示した場合にも、その後の治療選択肢は限られています。

 

木元 貴祥
再発・難治性の場合、ガイドラインでは以下の治療法が選択肢として掲載されています。2)
  • DHAP療法:デキサメタゾン、シスプラチン、シタラビン
  • ESHAP療法:メチルプレドニゾロン、エトポシド、シタラビン、シスプラチン
  • ICE療法:イホスファミド、カルボプラチン、エトポシド
  • CHASE療法:シクロホスファミド、シタラビン、デキサメタゾン、エトポシド
  • Dose adjusted-EPOCH療法:エトポシド、プレドニゾロン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン
  • MINE療法:ミトキサントロン、イホスファミド、メスナ、エトポシド
  • GDP療法:ゲムシタビン、デキサメタゾン、シスプラチン

いずれもリツキシマブと併用する場合あり

 

今回ご紹介するイエスカルタは再発・難治性のDLBCLに対して効果が期待されています!

 

CAR-T細胞療法とは:イエスカルタの治療概念

イエスカルタは「CAR-T細胞療法」と呼ばれる新たな治療法です。

参考CAR(Chimeric Antigen Receptor):キメラ抗原受容体

 

木元 貴祥
作用機序の前にまずはCAR-T細胞療法の治療概念について説明します。

 

ヒトの体内には異物やがん細胞を排除する機構(免疫機構)が存在しており、その中心を担う細胞として「T細胞」が知られています。このT細胞を改変するのがCAR-T細胞療法です。

 

step
1
患者さんのT細胞を取り出す

CAR-T細胞法ではまず患者さん自身のT細胞を取り出します(下図の①)。

 

step
2
CARを導入する

その後、遺伝子改変技術を用いて白血病細胞のCD19を特異的に認識する受容体である「CAR」をT細胞に導入します(下図の②)。CARは白血病細胞を発見するアンテナのような役割ですね♪

 

step
3
増殖させた後、投与する

CARが導入されたT細胞を「CAR-T細胞」と呼んでいますが、CAR-T細胞を培養・増殖(下図の③)させ、数を増やした後に患者さんの体内に投与します(下図の④)。

イエスカルタ(CAR-T療法)の概念・手順

 

なお、培養したCAR-T細胞を患者さんの体内に投与する前には「前処置」として免疫抑制薬等が投与されます。これはイエスカルタの効果を減弱させてしまう“制御性T細胞”の働きを事前に抑制させる目的です。

 

このように患者さんが本来持っているT細胞を改変して、白血病細胞をより認識するように設計されたのがCAR-T細胞療法です。

従って、イエスカルタは「患者さん自身のCAR-T細胞」を主成分とする医薬品です!

 

木元 貴祥
イエスカルタは患者さん毎に作成されるため、AさんにはAさん専用のCAR-T細胞、BさんにはBさん専用のCAR-T細胞といった具合ですね。

 

イエスカルタ(アキシカブタジン シロルーセル)の作用機序と特徴

体内に投与されたCAR-T細胞は、CD19を発現したリンパ腫細胞を特異的に認識して攻撃します。

その結果、リンパ腫細胞の死滅・増殖抑制効果が得られると考えられています。

イエスカルタ(アキシカブタジン シロルーセル)の作用機序と特徴

 

また、投与されたCAR-T細胞が体内に定着すると、自分自身で増殖することができますので、永久的にCD19を発現したリンパ腫細胞を監視・攻撃することが可能です!

 

そのためイエスカルタは基本的には1回の投与で治療が完了します。

イエスカルタの特徴:1回の投与で生着する

 

このようにイエスカルタは患者さん自身の“生きたT細胞”によって治療効果を発揮する新規の治療法です!

 

エビデンス紹介:国際共同第Ⅰ/Ⅱ相試験(ZUMA-1試験)

再発・難治性のDLBCLに対するイエスカルタの根拠となった臨床試験を一つご紹介します。3-4)

本試験は治療抵抗性のDLBCL患者さんを対象にイエスカルタの有効性と安全性を検討した国際共同第Ⅰ/Ⅱ相試験です。

 

主要評価項目は「奏効率」で、82%という結果でした。3)

また、長期フォローアップ解析(27.1か月時点)も報告されていて、生存期間中央値は未到達、無増悪生存期間は5.9か月という結果でした。4)

 

木元 貴祥
長期の有効性・安全性も確認されていますね!

 

ちなみに本試験では最初の投与で反応があり、その後、最初の投与から少なくとも3か月後に疾患が進行した場合に再投与することが可能でした。

 

副作用:サイトカイン放出症候群と対策

前述の臨床試験3)では、以下のような特徴的な副作用が報告されています。

  • サイトカイン放出症候群(悪心、倦怠感、頭痛、発熱、頻脈、など):93%
  • 神経毒性(脳卒中、錯乱、せん妄、振戦、傾眠、など):64%

 

特にサイトカイン放出症候群は死に至る可能性もあるため特に注意が必要です!!

 

類薬のキムリアでは、サイトカイン放出症候群の対処薬として、アクテムラ点滴静注用(一般名:トシリズマブ(遺伝子組換え))が使用可能とされています。

キムリア(チサゲンレクルユーセル)の作用機序・特徴と副作用【急性リンパ性白血病】

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イエスカルタでも何かしらの対策が講じられると予想しています!

 

収載時の薬価

現時点では未承認・薬価未収載です。

 

ちなみに再生医療等製品の保険適用は、医薬品(薬価)医療機器(材料価格)か、個別に判断されます。

<平成 26 年 11 月5日 中医協総-2-1(抜粋)>

1.保険適用に係る今後の対応について

○ 再生医療等製品の保険適用に関する当面の間の対応
・薬事法改正後に承認(条件・期限付承認を含む。)された再生医療等製品については、保険適用の希望のあった個別の製品の特性を踏まえ、医薬品の例により対応するか、医療機器の例により対応するかを、薬事承認の結果を踏まえて判断

 

※引用:厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第285回) 議事次第

 

木元 貴祥
類薬のキムリアが医薬品として薬価収載されていますので、イエスカルタも同様になると思われます。

 

まとめ・あとがき

イエスカルタはこんな薬

  • 国内2製品目のCAR-T細胞療法
  • 患者さん自身の“生きたT細胞”によって治療する
  • 1回の投与で治療が完了する
  • サイトカイン放出症候群と神経毒生に注意が必要

 

イエスカルタはCAR-T細胞療法といった新規の作用機序を有する医薬品です!

現在、キムリアやイエスカルタ以外のCAR-T細胞療法が様々な疾患に対して開発が進行中ですので、今後の動向も注目されています。

 

ただ、CAR-T細胞療法は現時点では血液がん(造血器腫瘍)にしか効果がなく、固形がん(例:大腸がん、肺がん、胃がん、等)には効果が示されていません。

 

木元 貴祥
何かしらの工夫が求められていますので、今後、固形がんへの広がりについても期待したいと思います☆

 

以上、今回は悪性リンパ腫の中でも「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」とイエスカルタの作用機序・エビデンス等について解説しました!

 

引用文献・資料等

  1. がん情報サービス|びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
  2. 日本血液学会|造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版
  3. ZUMA-1試験:N Engl J Med 2017; 377:2531-2544
  4. ZUMA-1試験(長期):Lancet Oncol. 2019 Jan;20(1):31-42.

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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