3.呼吸器系 12.悪性腫瘍

テセントリク(アテゾリズマブ)の作用機序と副作用【肺がん】

更新日:

厚労省の薬食審医薬品第二部会は2018年11月29日、テセントリク点滴静注1200mg(一般名:アテゾリズマブ(遺伝子組換え))の「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(扁平上皮がんを除く)」の一次治療への適応追加について承認了承しました!

現時点では未承認のためご注意ください。

製薬会社

  • 製造販売元:中外製薬(株)

 

抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬の併用は、同時期に肺がんの一次治療として承認了承されたキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)とテセントリクが初です!

 

テセントリクは既に非小細胞肺がんの二次治療として2018年1月19日に承認されています。

 

本日は非小細胞肺がんとテセントリク(アテゾリズマブ)の作用機序、そして各エビデンスについてご紹介します☆

 

<スポンサーリンク>

非小細胞肺がんと治療について

肺がんは性質や薬の効き方によって“小細胞肺がん”と“非小細胞肺がん”に分類されています。

早期に発見できた場合、手術の適応になりますが、発見時に他の臓器に転移がある場合、化学療法(抗がん剤や分子標的薬)の治療が中心となります。

 

また非小細胞肺がんはその組織型によって以下の2種類に分類されています。

  1. 非扁平上皮がん
  2. 扁平上皮がん

 

非小細胞肺がん(非扁平上皮)の初回化学療法(一次化学療法)は、がんの遺伝子状況によって以下の優先順位で使用する薬剤が細かく使い分けられています。

 

 

 

 

 

 

  • 上記遺伝子等がすべて陰性の場合:アバスチンなどの分子標的薬と、シスプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ペメトレキセドなどの抗がん剤を組み合わせて使用

 

このように遺伝子等がすべて陰性であった場合、アバスチンと抗がん剤の併用が基本でしたが、テセントリクはこれらに併用して使用することが可能となる見込みです!

 

また、同時に承認了承されたキイトルーダもアリムタ(一般名:ペメトレキセド)+白金製剤(シスプラチンまたはカルボプラチン)併用療法が使用可能となる見込みです。

 

また、上記の一次化学療法で効果が得られなくなった場合、二次治療以降でもテセントリク単剤で使用できます。

 

がんと免疫チェックポイント

通常、がんができると生体内の免疫反応が活性化され、がん細胞を死に導こうとしますが、がん細胞はヒトの免疫機構から逃れる術をいくつか持っています。

その一つに、がん細胞ではヒトの免疫反応を抑制する「PD-L1(“ピーディーエルワン”と読みます)」を大量に発現し、免疫反応(T細胞からの攻撃)から逃れています。

 

PD-L1はT細胞のPD-1(ピーディーワン)と結合することで、T細胞の活性を抑制させる働きがある、いわば、ブレーキのような働きを担っています。

 

本来、PD-L1やPD-1はT細胞が自己を攻撃しない(自己免疫抑制作用)のために体内に存在していますが、がん細胞はそれを逆手に取っています。

これを“免疫チェックポイント”と呼んでいます。

 

<スポンサーリンク>

テセントリク(一般名:アテゾリズマブ)の作用機序

テセントリクはがん細胞の「PD-L1」を抑制することで、がん細胞のブレーキを解除させ、ヒト本来の免疫反応を活性化させます。

その結果、T細胞が、がん細胞を攻撃することでがん細胞を死に導く、といった作用機序を有しています☆

 

T細胞が活性化され、ヒト本来の免疫力によってがん細胞を攻撃しますので、従来の抗がん剤と比較して副作用が比較的少ないと言われています。

 

テセントリク(一般名:アテゾリズマブ)の副作用

主な副作用として、疲労、悪心、食欲減退、無力症、発熱、下痢、発疹、そう痒症などが報告されています。

また、免疫活性化に伴い、自己免疫疾患(例:間質性肺炎、1型糖尿病、甲状腺機能異常、腸炎、膵炎)等の発現が認められていますので注意が必要となります。

 

エビデンス紹介①:二次治療以降(OAK試験)

根拠となった臨床試験は非小細胞肺がんの二次治療以降としてタキソテール(一般名:ドセタキセル)とテセントリクを直接比較する第Ⅲ相臨床試験(OAK試験)です。1)

主要評価項目の全生存期間中央値はタキソテール群で9.6か月、テセントリク群で13.8か月と、テセントリク群で有意に延長していました(HR=0.73, P=0.0003)。

 

エビデンス紹介②:一次治療(IMpower150試験)

一次治療の根拠となった臨床試験(IMpower150試験)をご紹介します。2)

本試験は小細胞肺がんの一次治療の対象患者さんに対して、以下の3群を比較する第Ⅲ相臨床試験です。

  1. ACP群:テセントリク+カルボプラチン+パクリタキセル
  2. BCP群:アバスチン(ベバシズマブ)+カルボプラチン+パクリタキセル
  3. ABCP群:テセントリク+BCP

論文ではまずBCP群とABCP群が比較され、ABCP群の有意性が示された後に、ACP群とBCP群を比較するとされています。今回はBCP群とABCP群の結果を示します。

 

なお、主要評価項目は3つありますが、今回はそのうち一つの「EGFRとALK野生型症例におけるPFS*」について下表に示します。

試験群BCP群ABCP群
EGFRとALK野生型症例の
PFS中央値
6.8か月8.3か月
HR=0.62[95%CI 0.52-0.74], p<0.001
EGFRとALK野生型症例の
生存期間中央値
14.7か月19.2か月
HR=0.78[95%CI 0.64-0.96], p=0.02

*PFS(無増悪生存期間):がんが増悪するまでの期間

 

このように、EGFRとALKの遺伝子変異が無い患者さんでは化学療法にテセントリクを追加することで有意なPFSと生存期間の延長が示されています。

 

テセントリクの用法・用量

一次治療(化学療法併用)も二次治療以降(単剤)も用法・用量は以下です。

  • 1回1バイアル(1200mg)を60分間かけて3週間隔で点滴静注します。なお、初回投与の忍容性が良好であれば、 2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できます。

 

ただし、一次治療で使用する場合には、「カルボプラチン、パクリタキセル、べバシズマブ」と併用します。

 

 

通常、注射の抗がん剤や分子標的薬は、体表面積や体重によって投与量が決められていますが、テセントリクは体表面積・体重によらず、1バイアル使いきりで投与できるといった特徴があります!

 

<スポンサーリンク>

薬価

収載時(2018年4月18日)の薬価は以下の通りです。

  • 1瓶 625,567円

 

まとめ・あとがき

テセントリクはこんな薬

  • がん細胞のPD-L1を特異的に阻害する免疫チェックポイント阻害薬
  • 非小細胞肺がんの二次治療には単剤で使用する
  • 非小細胞肺がんの一次治療では抗がん剤と併用して使用する

 

非小細胞肺がんの一次治療として化学療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用はテセントリクと共にキイトルーダも承認了承されています。承認されれば化学療法との併用は初ですね。

 

今までのがん治療は、

  • 手術
  • 薬物治療(抗がん剤や分子標的薬)
  • 放射線治療

が主な治療でしたが、近年はテセントリクのような免疫チェックポイント阻害薬もがん領域の新たな治療法の一つとして確立されてきています!

 

また、テセントリクの投与は1バイアル使い切りのため、残薬や廃棄の問題が少なくなると期待されます。

 

以上、本日は非小細胞肺がんで初の抗PD-L1抗体薬のテセントリクをご紹介しました。

 

参考になったらシェアいただけると嬉しいです!
   

★おススメの関連記事&広告


※新薬情報オンラインの更新情報は、facebookページtwitterにて配信しています。
  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【薬剤師・講師】大阪薬科大学 卒。外資系製薬メーカー(MR)、薬剤師国家試験予備校講師、調剤薬局薬剤師を経て現在に至る。今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師です。薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

-3.呼吸器系, 12.悪性腫瘍
-,

Copyright© 新薬情報オンライン , 2018 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.