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テセントリク(アテゾリズマブ)の作用機序【肺がん/乳がん】

更新日:

2019年9月20日テセントリク点滴静注(アテゾリズマブ)に「トリプルネガティブ乳がん」に対する適応拡大が承認されました!

中外製薬|ニュースリリース

それに合わせて840mg製剤が追加されていますね。

 

基本情報

製品名テセントリク点滴静注1200mg/840mg
一般名アテゾリズマブ(遺伝子組換え)
製品名の由来Tcell(T細胞)に由来する。
製造販売中外製薬(株)
効能・効果<1200mg製剤>
○切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
○進展型小細胞肺がん
<840mg製剤>
○PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん
用法・用量記事内参照
収載時の薬価1200mg:1瓶 625,567円
840mg:薬価未収載

 

テセントリクは既に以下の効能・効果で承認・適応拡大されてきています。

  • 2018年1月:非小細胞肺がんの二次治療として承認
  • 2018年12月:非小細胞肺がんの一次治療として抗がん剤と併用で承認
  • 2019年8月:進展型小細胞肺がんの一次治療として抗がん剤と併用で承認

 

肺がんには非小細胞肺がんと小細胞肺がんがありますが、これまで小細胞肺がんに使用できる免疫チェックポイント阻害薬はありませんでした。

 

木元 貴祥
初の小細胞肺がんに使用できる免疫チェックポイント阻害薬ですね!また乳がんにおいても初の免疫チェックポイント阻害薬となりました。

 

今回は非小細胞肺がん・小細胞肺がん・乳がんとテセントリク(アテゾリズマブ)の作用機序、そして各エビデンスについてご紹介します☆

 

肺がんの分類について

肺がんは性質や薬の効き方によって“非小細胞肺がん”と“小細胞肺がん”に分類されています。

早期に発見できた場合、手術の適応になりますが、発見時に他の臓器に転移がある場合、化学療法(抗がん剤や分子標的薬)の治療が中心となります。

 

木元 貴祥
この分類によって使用できる治療薬が異なりますので、順に各組織分類別に解説していきます。

 

非小細胞肺がんの治療(切除不能・再発の場合)

非小細胞肺がんはその組織型によって以下の2種類に分類されています。

  1. 非扁平上皮がん
  2. 扁平上皮がん

 

非小細胞肺がん(非扁平上皮)の初回化学療法(一次化学療法)は、がんの遺伝子状況によって以下の優先順位で使用する薬剤が細かく使い分けられています。1)

 

 

 

 

 

 

  • 上記遺伝子等がすべて陰性の場合:アバスチンなどの分子標的薬と、シスプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ペメトレキセドなどの抗がん剤を組み合わせて使用

 

このように遺伝子等がすべて陰性であった場合、アバスチンと抗がん剤の併用が基本でしたが、テセントリクはこれらに併用して使用することが可能となりました!

 

また、同時に承認されたキイトルーダもアリムタ(一般名:ペメトレキセド)+白金製剤(シスプラチンまたはカルボプラチン)併用療法が使用可能となっています。

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の作用機序と副作用【肺がん】

続きを見る

 

上記の一次化学療法で効果が得られなくなった場合、二次治療以降でもテセントリク単剤で使用できます(一次化学療法で免疫チェックポイント阻害薬未使用の場合)。

 

非小細胞肺がんのうち、扁平上皮がんについては以下の記事をご確認ください。

ポートラーザ(ネシツムマブ)の作用機序と副作用【肺がん】

続きを見る

 

小細胞肺がんの治療(切除不能・再発の場合)

切除不能な小細胞肺がん(進展型小細胞肺がん)の場合、抗がん剤による化学療法が基本です。一次化学療法としては主に以下があります。1)

  • シスプラチン+イリノテカン療法
  • シスプラチン+エトポシド療法
  • カルボプラチン+エトポシド療法

 

テセントリクは後述する臨床試験の結果より、カルボプラチン+エトポシド療法と併用して使用することが見込まれます!

 

乳がんの概要

2011年の女性乳がんの罹患数は、約72,500人と、女性のがんの中では最も多く、約20%を占めると言われています。

 

木元 貴祥
最近では、北斗晶さんや、小林麻央さんが記憶に新しいと思います。

 

手術で取り切れるような早期の乳がんでは、5年生存率は80%を超えます(StageⅠ~Ⅱでは90%を超える)ので、治癒することが可能な比較的予後の良いがんとして知られています。

 

ただし、発見時に手術ができない(手術不能)の乳がんや、再発した乳がんでは5年生存率は30%と、治癒を見込むのは難しくなってしまいます(基本的には延命)。

 

従って、日頃の観察やがん検診(マンモグラフィや超音波検査)によって、できるだけ早期に発見することが非常に重要です!!!

また、乳がんの発生には女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっていることが知られています。

 

早期の乳がんの治療

早期の乳がんは基本的には手術によって完全に取り除くことが可能です。

場合によっては、術後にホルモン療法や抗がん剤によって再発を抑える治療が行われることもあります。

 

代表的な術後の再発治療としては以下の記事をご覧ください。

パージェタ(ペルツズマブ)の作用機序と副作用【乳がん】

続きを見る

 

転移のある乳がんの治療(手術不能)

しかし、発見時に転移がある乳がんの場合、手術はできませんので、薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤、分子標的薬)が基本となります。

 

乳がんは、がん細胞の性質によって、薬物療法が異なります。

  1. ホルモン(エストロゲン受容体/プロゲステロン受容体)陽性の乳がん:ホルモン療法±CDK4/6阻害薬
  2. HER2陽性の乳がん:ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)±パージェタ(一般名:ペルツズマブ)±抗がん剤
  3. ホルモンもHER2も陰性の乳がん(トリプルネガティブ乳がん):抗がん剤

 

最も多いとされるのが、「①ホルモン陽性の乳がん」で、この場合はホルモン療法が基本です。

ホルモン陽性の乳がんに対しては

といったCDK4/6阻害薬が使用できます。

 

「②HER2陽性の乳がん」の場合にはパージェタやハーセプチンが使用できますので詳しくは以下をご覧ください。

パージェタ(ペルツズマブ)の作用機序と副作用【乳がん】

続きを見る

 

「③ホルモンもHER2も陰性の乳がん(トリプルネガティブ乳がん)」の場合、アントラサイクリン系やタキサン系の抗がん剤単剤が標準です。代表的なタキサン系抗がん剤については以下の記事で解説しています。

タキソールとタキソテールの作用機序と副作用【抗がん剤】

続きを見る

 

今回ご紹介するテセントリクはトリプルネガティブ乳がんPD-L1陽性の場合、初回治療としてアブラキサン(nab-パクリタキセル)と併用することで治療効果が得られています。

 

なお、初回治療後にBRCA遺伝子に変異がある場合、リムパーザ(一般名:オラパリブ)が使用できますので、詳しくは以下の記事をご覧ください。

リムパーザ(オラパリブ)の作用機序【卵巣がん/乳がん】

続きを見る

 

木元 貴祥
それではここからテセントリクの作用機序に関連する免疫チェックポイントについて解説していきます。

 

がんと免疫チェックポイント

通常、がんができると生体内の免疫反応が活性化され、がん細胞を死に導こうとしますが、がん細胞はヒトの免疫機構から逃れる術をいくつか持っています。

その一つに、がん細胞ではヒトの免疫反応を抑制する「PD-L1(“ピーディーエルワン”と読みます)」を大量に発現し、免疫反応(T細胞からの攻撃)から逃れています。

 

PD-L1はT細胞のPD-1(ピーディーワン)と結合することで、T細胞の活性を抑制させる働きがある、いわば、ブレーキのような働きを担っています。

 

本来、PD-L1やPD-1はT細胞が自己を攻撃しない(自己免疫抑制作用)のために体内に存在していますが、がん細胞はそれを逆手に取っています。

これを“免疫チェックポイント”と呼んでいます。

 

テセントリク(アテゾリズマブ)の作用機序

テセントリクはがん細胞の「PD-L1」を抑制することで、がん細胞のブレーキを解除させ、ヒト本来の免疫反応を活性化させます。

 

その結果、T細胞が、がん細胞を攻撃することでがん細胞を死に導く、といった作用機序を有しています☆

 

T細胞が活性化され、ヒト本来の免疫力によってがん細胞を攻撃しますので、従来の抗がん剤と比較して副作用が比較的少ないと言われています。

 

副作用

主な副作用として、疲労、悪心、食欲減退、無力症、発熱、下痢、発疹、そう痒症などが報告されています。

 

また、免疫活性化に伴い、自己免疫疾患(例:間質性肺炎、1型糖尿病、甲状腺機能異常、腸炎、膵炎)等の発現が認められていますので注意が必要となります。

 

エビデンス紹介①:非小細胞肺がんの二次治療以降(OAK試験)

根拠となった臨床試験は非小細胞肺がんの二次治療以降としてタキソテール(一般名:ドセタキセル)とテセントリクを直接比較する第Ⅲ相臨床試験(OAK試験)です。2)

 

主要評価項目の全生存期間中央値はタキソテール群で9.6か月、テセントリク群で13.8か月と、テセントリク群で有意に延長していました(HR=0.73, P=0.0003)。

 

エビデンス紹介②:非小細胞肺がんの一次治療(IMpower150試験)

一次治療の根拠となった臨床試験(IMpower150試験)をご紹介します。3)

本試験は小細胞肺がんの一次治療の対象患者さんに対して、以下の3群を比較する第Ⅲ相臨床試験です。

  1. ACP群:テセントリク+カルボプラチン+パクリタキセル
  2. BCP群:アバスチン(ベバシズマブ)+カルボプラチン+パクリタキセル
  3. ABCP群:テセントリク+BCP

論文ではまずBCP群とABCP群が比較され、ABCP群の有意性が示された後に、ACP群とBCP群を比較するとされています。今回はBCP群とABCP群の結果を示します。

 

なお、主要評価項目は3つありますが、今回はそのうち一つの「EGFRとALK野生型症例におけるPFS*」について下表に示します。

試験群BCP群ABCP群
EGFRとALK野生型症例の
PFS中央値
6.8か月8.3か月
HR=0.62[95%CI 0.52-0.74], p<0.001
EGFRとALK野生型症例の
生存期間中央値
14.7か月19.2か月
HR=0.78[95%CI 0.64-0.96], p=0.02

*PFS(無増悪生存期間):がんが増悪するまでの期間

 

このように、EGFRとALKの遺伝子変異が無い患者さんでは化学療法にテセントリクを追加することで有意なPFSと生存期間の延長が示されています。

 

エビデンス紹介③:小細胞肺がんの一次治療(IMpower133試験)

小細胞肺がんの根拠となった臨床試験(IMpower133試験)を紹介します。4)

本試験は進展型の小細胞肺がん患者さんを対象に、一次化学療法として化学療法(カルボプラチン+エトポシド療法)群とそれにテセントリクを併用する群を比較検討した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目は「全生存期間」で結果は以下の通りでした。

試験群化学療法群化学療法+
テセントリク群
全生存期間中央値10.3か月12.3か月
HR=0.70[95%CI 0.54-0.91], p=0.007
PFS中央値4.3 か月5.2か月
HR=0.77[95%CI 0.62-0.96], p=0.02

 

木元 貴祥
このように小細胞肺がんで初めて生存期間の延長を示した免疫チェックポイント阻害薬がテセントリクです!

 

エビデンス紹介④:トリプルネガティブ乳がん(IMpassion130試験)

乳がんの根拠となった臨床試験(IMpassion130試験)をご紹介します。5)

本試験は進行・再発のトリプルネガティブ乳がんの一次治療として、アブラキサン(一般名:nab-パクリタキセル)とテセントリク+アブラキサンを比較する第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目は「PFS(全例およびPD-L1陽性例)」と「全生存期間(全例およびPD-L1陽性例)」とされ、結果は以下の通りでした。

試験群アブラキサン群アブラキサン+
テセントリク群
PFS中央値
(全例)
5.5か月7.2か月
HR=0.80[95%CI 0.69-0.92], p=0.002
PFS中央値
(PD-L1陽性例)
5.0か月7.5か月
HR=0.62[95%CI 0.49-0.78], p<0.001
全生存期間中央値
(全例)
17.6か月21.3か月
HR=0.84[95%CI 0.69-1.02], p=0.08
全生存期間中央値
(PD-L1陽性例)
15.5か月25.0か月
HR=0.62[95%CI 0.45-0.86]

 

木元 貴祥
全例でのOSは残念ながら有意差がありませんでしたが、PD-L1陽性例に限ればPFSもOSも有意に延長しています。このため、「PD-L1陽性の」と限定が付いたと推察されますね。

 

併用するアブラキサンの作用機序については、膵がんの記事ですが以下で解説しています。

アブラキサン(パクリタキセル)の作用機序と副作用【膵臓がん】

続きを見る

 

用法・用量

肺がんに使用する場合、一次治療(化学療法併用)も二次治療以降(単剤)も用法・用量は以下です。

  • 1回1バイアル(1200mg)を60分間かけて3週間隔で点滴静注します。なお、初回投与の忍容性が良好であれば、 2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できます。

 

ただし、一次治療で化学療法と併用する場合には以下の限定が付きます。

  • 非小細胞肺がん:「カルボプラチン、パクリタキセル、べバシズマブ」と併用
  • 小細胞肺がん:「カルボプラチン、エトポシド」と併用

 

一方、乳がんで使用する場合、用法・用量は以下です。

  • パクリタキセル(アルブミン懸濁型)との併用において、通常、成人には1回1バイアル(840mg)を60分かけて2週間間隔で点滴静注します。なお、初回投与の忍容性が良好であれば、 2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できます。

 

乳がんの場合には840mgですので、840mg製剤を1バイアル使い切りで使用します。

 

木元 貴祥
通常、注射の抗がん剤や分子標的薬は、体表面積や体重によって投与量が決められていますが、テセントリクは体表面積・体重によらず、1バイアル使いきりで投与できるといった特徴がありますね!

 

収載時の薬価

収載時の薬価は以下の通りです。

 

まとめ・あとがき

テセントリクはこんな薬

  • がん細胞のPD-L1を特異的に阻害する免疫チェックポイント阻害薬
  • 非小細胞肺がんの二次治療には単剤で使用する
  • 非小細胞肺がんの一次治療では抗がん剤と併用して使用する
  • 小細胞肺がんで初の免疫チェックポイント阻害薬で抗がん剤と併用して使用する
  • 乳がんで初の免疫チェックポイント阻害薬となる見込み

 

非小細胞肺がんの一次治療として化学療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用はテセントリクと共にキイトルーダも承認されています。

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の作用機序と副作用【肺がん】

続きを見る

 

今までのがん治療は、

  • 手術
  • 薬物治療(抗がん剤や分子標的薬)
  • 放射線治療

が主な治療でしたが、近年はテセントリクのような免疫チェックポイント阻害薬もがん領域の新たな治療法の一つとして確立されてきています!

 

また、テセントリクの投与は1バイアル使い切りのため、残薬や廃棄の問題が少なくなると期待されます。

 

以上、今回は非小細胞肺がん・小細胞肺がん・乳がんと抗PD-L1抗体薬のテセントリクをご紹介しました。

 

引用文献・資料等

  1.  日本肺癌学会|肺癌診療ガイドライン2018年版
  2. OAK試験:Lancet. 2017 Jan 21;389(10066):255-265.
  3. IMpower150試験:N Engl J Med. 2018 Jun 14;378(24):2288-2301.
  4. IMpower133試験:N Engl J Med 2018; 379:2220-2229
  5. IMpassion130試験:N Engl J Med 2018; 379:2108-2121

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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