11.血液・造血器系 12.悪性腫瘍

ダラザレックス(ダラツムマブ)の作用機序【多発性骨髄腫】

更新日:

2018年12月、ダラザレックス点滴静注100mg、同400mg(一般名:ダラツムマブ(遺伝子組換え))について、未治療を含む多発性骨髄腫」の効能・効果の追加追加に関する一部変更承認が申請されました。

現時点では未治療の多発性骨髄腫は未承認のためご注意ください。

製薬会社

  • 製造販売元:ヤンセンファーマ(株)

 

ダラザレックスは既に「再発又は難治性の多発性骨髄腫」を効能・効果として2017年9月27日に承認されています。

 

本日は多発性骨髄腫とダラザレックス(ダラツムマブ)の作用機序についてご紹介します。

 

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多発性骨髄腫について

通常、人の体内では、異物(ウイルス・細菌など)が侵入した際、B細胞から免疫グロブリン(抗体)が作られることで体を異物から守って感染症等を抑えてくれています。

 

多発性骨髄腫では、この抗体を産生するB細胞が異常増殖(腫瘍化)することで引き起こされる疾患で、血液腫瘍に分類されています。

がん化したB細胞(“骨髄腫細胞”と呼ばれます)は、健康な血液の産生を妨げたり、骨をもろくするなどのさまざまな障害を引き起こします。

 

その結果、症状として、

  • 骨痛
  • 腎機能障害
  • 貧血
  • 易感染性
  • 出血傾向

などがみられます。

 

またこの骨髄腫細胞の表面には、正常細胞にはない「CD38」と呼ばれるシグナル伝達分子が過剰に発現していることも知られています。

 

多発性骨髄腫の治療

多発性骨髄腫の治療は造血幹細胞移植が可能かどうか、によって選択肢が異なります。1)

  • 移植が可能:ベルケイド(一般名:ボルテゾミブ)+デキサメタゾンを3~4回施行し、その後にシクロホスファミド+G-CSFを行った後に造血幹細胞移植
  • 移植が不能:MPB療法*やMPT療法*が標準治療

 

*参考

 

移植が成功したとしても一定数の患者さんは残念ながら再発してしまいます。また、移植が不能でMPB療法やMPT療法を行ったとしても不応(難治性)となる場合もあります。

 

今回ご紹介するダラザレックス再発・難治性の多発性骨髄腫に使用できる薬剤です。

 

そして今後は移植が不能な場合の初回治療として、MPB療法にダラザレックスを併用した治療が期待されています。

現時点では初回治療は未承認

 

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ダラザレックス(一般名:ダラツムマブ)の作用機序

ダラザレックスは、骨髄腫細胞の表面にある「CD38」に特異的に結合する抗体製剤です。

 

ダラザレックスが目印となって免疫細胞が攻撃しやすくなったりすること(ADCC活性)によって、抗腫瘍効果を発揮すると考えられています。

 

その他にも以下の作用によって腫瘍細胞を排除すると考えられています。

  • DCD(補体依存性細胞傷害)作用:補体系が活性化し、腫瘍細胞が障害される
  • ADCP(抗体依存性細胞貪食)作用:貪食細胞が腫瘍細胞を貪食する

 

エビデンス紹介①:再発・難治性(CASTOR試験・POLLUX試験)

再発・難治性の根拠となった臨床試験(CASTOR試験・POLLUX 試験)をご紹介します。2-4)

いずれも再発・難治性の多発性骨髄腫患者さんを対象に、以下の治療にダラザレックスを併用した場合の有効性・安全性を検証した第Ⅲ相臨床試験です。

  • CASTOR試験2-3):ボルテゾミブ+デキサメタゾン(Bd療法)
  • POLLUX 試験4):レナリドミド+デキサメタゾ(Ld療法)

 

いずれの臨床試験も主要評価項目は「無増悪生存期間」です。

試験名CASTOR試験POLLUX 試験
試験群Bd療法ダラザレックス+
Bd療法
Ld療法ダラザレックス+
Ld療法
無増悪生存期間中央値7.1か月16.7か月18.4か月未到達
HR=0.31、p<0.0001HR=0.37、p<0.001

 

このように再発・難治性の多発性骨髄腫患者さんの治療(Bd療法 or Ld療法)にタラザレックスを併用することで増悪までの期間を有意に延長することが示されています。

 

エビデンス紹介②:初回治療(ALCYONE試験)

初回治療の根拠となった臨床試験(ALCYONE試験)をご紹介します。5)

移植が不能な多発性骨髄腫患者さんを対象に、標準治療のMPB療法(ベルケイド+メルファラン+デキサメタゾン)とタラザレックス+MPB療法を比較した第Ⅲ相臨床試験です。

 

本試験の主要評価項目は「無増悪生存期間」です。

MPB療法タラザレックス+
MPB療法
無増悪生存期間中央値18.1か月未到達
HR=0.50、p<0.001

 

現時点では初回治療は未承認

 

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ダラザレックス(一般名:ダラツムマブ)の副作用

主な副作用として、インフュージョンリアクション、好中球減少、上気道感染、疲労、咳嗽などが報告されています。

 

インフュージョンリアクションの発現率が高いことから、投与時には以下の対処が必要です。6)

本剤投与によるinfusion reactionを軽減させるために、本剤投与開始1~3時間前に副腎皮質ホルモン、解熱鎮痛剤及び抗ヒスタミン剤を投与すること。また、遅発性のinfusion reactionを軽減させるために、必要に応じて本剤投与後に副腎皮質ホルモン等を投与すること。なお、慢性閉塞性肺疾患若しくは気管支喘息のある患者又はそれらの既往歴のある患者には、本剤の投与後処置として気管支拡張薬及び吸入ステロイド薬の投与を考慮すること。

 

ダラザレックス(一般名:ダラツムマブ)の薬価

収載時(2017年11月22日時点)の薬価は以下の通りです。

  • 100mg 5mL1瓶:51,312円
  • 400mg 20mL1瓶:184,552円(1日薬価:20,053円)

 

まとめ・あとがき

ダラザレックスはこんな薬

  • 腫瘍細胞のCD38を特異的に認識する抗体製剤
  • ADCC作用、DCD作用、ADCP作用によって抗腫瘍効果を発揮する

 

最近、新規のプロテアソーム阻害剤のニンラーロ(一般名:イキサゾミブクエン酸エステル)が承認・発売されていますが、ニンラーロとの併用は現時点ではできません

 

治療選択肢が広がったため、患者さんにとっては朗報ではないかと考えます。

今後は各薬剤の使い分け等が検討されれば興味深いと感じます☆

 

引用文献・資料等

  1. 造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版 第2版
  2. CASTOR試験:N Engl J Med. 2016 Aug 25;375(8):754-66.
  3. CASTOR試験(追加解析):Haematologica. 2018 Sep 20. pii: haematol.2018.194118.
  4. POLLUX試験:N Engl J Med. 2016 Oct 6;375(14):1319-1331.
  5. ALCYONE試験:N Engl J Med. 2018 Feb 8;378(6):518-528.
  6. ダラザレックス 添付文書
参考になったらシェアいただけると嬉しいです!
   

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【薬剤師・講師】大阪薬科大学 卒。外資系製薬メーカー(MR)、薬剤師国家試験予備校講師、調剤薬局薬剤師を経て現在に至る。今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師です。薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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