10.皮膚・骨格筋

スピンラザ(ヌシネルセン)の作用機序【脊髄性筋委縮症】

2022年3月28日スピンラザ髄注12mg(一般名:ヌシネルセンナトリウム)の効能・効能に「臨床所見は発現していないが遺伝子検査により発症が予測される脊髄性筋萎縮症」を追加することが承認されました!

 

スピンラザは2017年7月3日に「乳児型」のみの脊髄性筋委縮症に対して承認され、同年9月22日に全ての型の「脊髄性筋委縮症」へ適応拡大が承認されています。

 

木元 貴祥
今後は臨床症状発現前でも使用できるようになりましたね!

 

スピンラザは国内初の「アンチセンス核酸医薬品」です♪

 

本日は脊髄性筋委縮症とスピンラザ(ヌシネルセン)の作用機序についてご紹介します☆

 

脊髄性筋委縮症とは

脊髄性筋萎縮症は、遺伝的要因により、脊髄等の運動神経細胞が変性・脱落することで、筋収縮刺激がうまく伝達できなくなる疾患です。

そのため、筋力の低下・委縮や筋無力を引き起こし、進行して重篤になると、呼吸や嚥下など生命維持のための基本的な身体機能に支障をきたす恐れがある難病指定の神経変性疾患です。

 

原因としては、5番染色体にある運動神経細胞生存(SMN)遺伝子の変異によると考えられています。

 

正常なSMN遺伝子(SMN1遺伝子)からは、正常な活性を有するSMNタンパク質が合成されます。しかし、SMAではSMN1遺伝子が欠損・変異しているため、正常なSMNタンパク質が合成されません。

そこで、副経路として存在しているSMN2遺伝子からSMNタンパク質が合成されるのですが、SMN2遺伝子の約90%はエキソン7に変異があるため、mRNA前駆体のスプライシング過程でイントロンと一緒にエキソン7が切り取られてしまい、活性のない異常SMNタンパク質が合成されてしまいます(SMN2遺伝子から正常なSMNタンパク質が合成される割合は10%前後)。

脊髄性筋委縮症とSMN1/SMN2遺伝子

 

参考

  • エキソン:タンパク質情報がコードされている配列
  • イントロン:タンパク質情報がコードされていない配列
  • スプライシング:イントロンが取り除かれ、エキソンのみの配列にする過程
  • 転写:遺伝子(DNA)からmRNA前駆体が合成される過程
  • 翻訳:mRNAからタンパク質が合成される過程

 

また脊髄性筋萎縮症には以下の型が知られています。

  • Ⅰ型:重症型、急性乳児型
  • Ⅱ型:中間型、慢性乳児型
  • Ⅲ型:軽症型、慢性型
  • Ⅳ型:成人型

 

スピンラザ(一般名:ヌシネルセンナトリウム)の作用機序

スプライシングでは、取り除くイントロンの配列(スプライシング因子)を認識することで行われます。

副経路であるSMN2遺伝子のmRAN前駆体のイントロンには、エキソン7まで一緒に取り除くスプライシング因子が存在しており、この因子があることでエキソン7も取り除かれてしまいます。

このスプライシング因子配列を「ISS-N1」と呼んでいます。

 

スピンラザは、mRNA前駆体のエキソン7下流のイントロン部分にあるISS-N1配列と特異的に結合する短鎖合成ヌクレオチドで、スプライシングが認識されなくなり、エキソン7のスプライシングを回避することができます!

スピンラザ(一般名:ヌシネルセンナトリウム)の作用機序

 

収載時の薬価

薬価は1瓶当たり、932万424円で、2017年8月30日に収載されました。

 

あとがき

このように、標的RNAに結合して、その遺伝子発現を調整する合成ヌクレオチドのことを「アンチセンス核酸医薬品」と呼んでいます。

国内ではアンチセンス核酸医薬品として初の承認です!!

 

通常、新薬の申請から承認までは1年程の期間を要しますが、スピンラザはわずか7カ月のスピード承認でした^^

 

今後、このようなアンチセンス核酸医薬品は様々な疾患(特に筋ジストロフィー等の希少疾病)に対して開発されていく見込みです。

 

以上、本日は少し難しい内容だったと思いますが、脊髄性筋委縮症とスピンラザの作用機序についてご紹介いたしました♪

 

2020年には1回の投与で治療が完了するゾルゲンスマも登場しましたので合わせてご確認くださいませ〜☆

ゾルゲンスマ(オナセムノゲンアベパルボベク)の作用機序・特徴【脊髄性筋委縮症】

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2021年には経口治療薬のエブリスディ(リスジプラム)も登場しています♪

エブリスディ(リスジプラム)の作用機序【脊髄性筋委縮症】

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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