8.感染症

アビガン(ファビピラビル)の作用機序【インフルエンザ】

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2014年3月24日、「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分のものに限る。)」を効能・効果とする新しい抗インフルエンザウイルス薬であるアビガン錠(一般名:ファビピラビル)が承認されました☆

製薬会社

  • 製造販売元:富士フイルム富山化学(株)
  • 発売:大正富山医薬品(株)

 

アビガンはこれまでのインフルエンザ治療薬と異なる作用機序を有している薬剤で注目されていました。

しかしながら、非臨床試験で胎児への催奇形性が確認されたために、「緊急事態のみ」にしか使用できません。

 

今回は、インフルエンザウイルスの感染・増殖メカニズムとアビガン(ファビピラビル)の作用機序についてご紹介します。

 

インフルエンザウイルスとは

インフルエンザ、という名前は必ず一度は聞いたことがあると思います。

正式には「インフルエンザウイルス感染症」と呼びます。例年12月~3月頃に流行し、世間を賑わせていますよね。

 

インフルエンザウイルスは「一本鎖RNA」を持つウイルスで、単体では増殖することができませんので、ヒトを含む様々な動物に感染して増殖します。

 

インフルエンザウイルスは、構成するタンパク質の違いから、A型、B型、C型に分類されています。

  • A型:ヒト、鳥、ブタ、ウマに感染し、病原性が強く、症状も強く出る
  • B型:ヒトにしか感染せず、病原性が強い
  • C型:ヒトにしか感染しないが、病原性は弱い

よく流行するのは病原性の強いA型B型ですね。

C型については一度感染すると免疫を獲得するため、大人ではかかりにくいですが、乳幼児に多いとされています。

 

症状

インフルエンザ感染の症状としては、

  • 突然現れる高熱
  • 頭痛
  • 筋肉痛や関節痛
  • のどの強い痛み
  • 咳・鼻水

などが挙げられます。

特にA型のインフルエンザ感染症では上記の症状(特に高熱)が強くみられる傾向があります。

免疫力の低下してる方や高齢者の方では気管支炎や肺炎など、症状が重篤化する恐れもあります。

 

また小児では中耳炎、熱性けいれん、急性脳症などを併発し、重篤になる場合があるため、注意が必要です。

 

インフルエンザの予防

インフルエンザ感染症は、まずは感染しないことが最重要です!

そのため、毎年のインフルエンザワクチン接種の他、手洗い・うがい・マスク着用・加湿、といった日頃の生活で感染を予防することが大切です。

 

インフルエンザの治療

インフルエンザと思われる症状が発現した際には、まずは医療機関を受診して診断することが重要です。

インフルエンザであった場合、医師がその必要性を判断し、抗インフルエンザウイルス薬が処方されます。また、水分を十分に補給し、睡眠を十分にとることも大切です。

それではここからインフルエンザウイルスの感染メカニズムについてご紹介します。

 

インフルエンザウイルスの感染・増殖メカニズム

インフルエンザウイルスは以下の図のようなプロセスで感染・増殖します。

  1. 吸着・膜融合・脱殻ヒト細胞内に入る
  2. mRNAの合成とRNAの複製ヒト細胞内で増える
  3. 細胞からの遊離:ヒト細胞外へ出て、他の細胞に感染する

それではここから各プロセスについてご説明します。

 

①吸着・膜融合・脱殻

インフルエンザウイルスは、ヒトの粘膜上皮細胞にある「シアル酸レセプター」と呼ばれるところに結合(“吸着”と呼びます)し、そこからヒト細胞内に取り込まれます。

 

ヒト細胞内に取り込まれたウイルスは、今度はウイルスを包んでいたヒト細胞の膜とウイルスの殻の部分を融合させ(“膜融合”と呼びます)、ウィルスの殻が破れることで(“脱殻”と呼びます)、ウイルスのRNAがヒト細胞内に放出されます。

 

②mRNAの合成とRNAの複製

通常、ヒトのDNAは「転写」によってmRNAが作成され、mRNAの情報を「翻訳」することでタンパク質が合成されます。

※転写:DNAまたはRNAからmRNAを合成すること
※翻訳:mRNAからタンパク質を合成すること

 

【インフルエンザウイルスのmRNA合成】

インフルエンザウイルスのRNAは非常に単純な構造のため、そのままでは翻訳が開始できません。

少し難しく言うと、RNAの頭の部分に「キャップ構造(5'キャップ)」と呼ばれるものが存在しない限り、翻訳は開始されません。

もちろん、ヒトのmRNAにはキャップ構造があります。

 

従って、インフルエンザウイルスは自身のRNAからキャップ構造を持つmRNAを作成する必要があります。

 

そこで、インフルエンザウイルスはヒトのmRNAのキャップ構造を認識し、「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ」と呼ばれる自身のタンパク質によって切断して自分のRNAに結合させます。

エンドヌクレアーゼによってヒトのmRNAからキャップ構造を奪い取るイメージですね。

 

このキャップ構造を起点(プライマー)として転写が開始され、インフルエンザウイルスが元から持っている「RNA依存性RNAポリメラーゼ」によって伸長反応が促されます。

伸長反応の最後には「ポリA鎖」と呼ばれるmRNAの安定性に関わるものも付与され、ウイルスRNAからウイルスmRNAの転写が完了します。

 

その後、mRNAは翻訳が開始され、ウイルスのタンパク質が合成されます。

 

【インフルエンザウイルスのRNA複製】

一方、RNAの複製反応は、不明確なことが多いとされていますが、インフルエンザウイルスが元から持っている「RNA依存性RNAポリメラーゼ」によって、自身のRNAの複製が行われると考えられています。

 

このようにして出来上がったウイルスタンパク質とウイルスのRNAが合わさって、インフルエンザウイルスが完成します。

このプロセスを繰り返すことで、ヒトの細胞内ではインフルエンザウイルスが増殖し続けます。

 

③細胞からの遊離

ヒト細胞内で増殖したインフルエンザウイルスは、最後にヒト細胞から離れ、また他の細胞に感染していきます。

遊離する直前には、ヒト細胞の表面に盛り上がって突起(“出芽”と呼びます)となっており、シアル酸レセプターに繋がれている状態です。

このままでは細胞から遊離できませんので、インフルエンザウイルスは「ノイラミニダーゼ」と呼ばれるタンパク質によって、シアル酸レセプターを切り離します。

これにより、ヒト細胞からインフルエンザウイルスが遊離され、また他の細胞に感染していきます。

 

以上がインフルエンザウイルスの感染・増殖メカニズムです!

 

アビガン(一般名:ファビピラビル)の作用機序

アビガンは上記「②mRNAの合成とRNAの複製」に関与している「RNA依存性RNAポリメラーゼ」を選択的に阻害する薬剤です!

mRNAの伸長反応RNAの複製を共に阻害できるため、ウイルスの増殖を抑制することが可能です。

従って、既存の「ノイラミニダーゼ阻害薬」とは作用点が異なっています。

 

用法・用量

用法・用量は、「通常、成人にはファビピラビルとして1日目は1回1600mgを1日2回、2日目から5日目は1回600mgを1日2回経口投与する。総投与期間は5日間とすること」とされています。

 

注意事項

現時点で有効性のエビデンスが限られていることや、非臨床試験では催奇形性が確認されているため、以下のような制限などがあります。

  • 追加臨床試験の実施
  • パンデミック発生まで一般に流通させない
  • 妊婦や妊娠の可能性のある女性への投与回避や投与中と投与後7日間避妊措置を行う安全対策

従って、「緊急事態」と国が認めた場合に限って使用が許可される薬剤です。

本剤は、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分な新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、本剤を当該インフルエンザウイルスへの対策に使用すると国が判断した場合にのみ、患者への投与が検討される医薬品である。

 

追加の臨床試験では有効性と安全性がしっかり確認されることを期待しています♪

 

あとがき

現在、主流で使用されているインフルエンザ治療薬は「ノイラミニダーゼ阻害薬」です。

【インフルエンザ】ノイラミニダーゼ阻害薬の作用機序と一覧表

続きを見る

 

2018年には、1回の経口投与で治療が完了するキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬ゾフルーザ錠」(一般名:バロキサビル マルボキシルが登場しました。

ゾフルーザ(バロキサビル)の作用機序・耐性:類薬との比較【インフルエンザ治療薬】

続きを見る

 

まずは、予防のために手洗い・うがい・マスク着用を徹底してくださいね☆

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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