1.中枢神経系

エビリファイ(アリピプラゾール)の作用機序【統合失調症】

今回は抗精神病薬のエビリファイ(一般名:アリピプラゾール)の作用機序と、その適応の一つである「統合失調症」を中心にご紹介します!

エビリファイの適応(2016年11月時点)は以下の通りです。

  • 統合失調症
  • 双極性障害における躁症状の改善
  • うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)
  • 小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性

 

統合失調症とは

統合失調症は認知機能障害、思考障害、感情変化ときわめて情緒不安定なまたは緊張性の行動を特徴とする精神障害です。

症状としては「陽性症状」と「陰性症状」があります。

  1. 陽性症状:妄想や幻覚、等
  2. 陰性症状:感情表現が乏しい、意欲低下、情動の平板化、引きこもり、感情鈍麻性、快感消失、注意力欠陥、社会能力の欠乏、等

 

イメージとしては、陽性症状は「ないものがある」陰性症状は「あるべきものがない」といったところでしょうか。

発症年齢は、典型的には10代後半から20代前半であり、その原因は多面的で、遺伝的、環境的要因(ストレス等)の両方が関与するものと考えられています。

 

発症メカニズムと治療薬

統合失調症の陽性症状では、神経伝達物質の1つであるドパミン量が中脳辺縁系で過剰になっています。

 

これをドパミン仮説と呼び、統合失調症の治療においては、非常に長い歴史があるものでした。

ドパミンがドパミンD2受容体に作用することで陽性症状が発現するため、これを抑えるためにはドパミンD2受容体遮断薬(後述の“定型抗精神病薬”)を使用します。

 

一方、中脳辺縁系ドパミンが多くなっている陽性症状に比べて、陰性症状では逆に前頭前皮質のドパミン量が減っていることが知られています。

 

そのため、D2受容体遮断薬だけでは陰性症状まで改善することはできません。

ここで、D2受容体遮断薬に加えてセロトニンの作用を抑えれば陰性症状を改善できることが分かっています。

セロトニンとドパミンは拮抗の関係にありますので、セロトニンの作用を抑える(セロトニン受容体遮断)ことで、前頭前皮質のドパミン活性が高まり、その結果、陰性症状が改善すると言われています。

 

統合失調症治療薬の種類

統合失調症の治療の中心は薬物療法です。

治療薬には、「定型抗精神病薬」と「非定型抗精神病薬」の二種類があります。

定型抗精神病薬は主に脳内のドパミンD2受容体のみを遮断して陽性症状を改善する薬ですが、陰性症状は改善できません

また、D2受容体を強く遮断してしまうと、ドパミンによる刺激が極端に減少してしまい、副作用としてパーキンソン症候群が発現してしまいます。

これを「錐体外路障害」と呼んでいます。

ハロペリドールやクロルプロマジンが該当しますが、最近では陽性症状だけでなく陰性症状も改善する非定型抗精神病薬が良く使用されるため、定型抗精神病薬はあまり使用されていないと思います。

一方、非定型抗精神病薬は、比較的新しい薬で、作用の違いから「SDA系」「MARTA系」「DSS系」の3つに分類されており、こちらは陰性症状も改善することができます。

 

今回ご紹介するエビリファイは「DSS系」に分類されている薬剤です。

 

SDA系の作用機序(代表薬:リスパダール)

SDA(Serotonin-Dopamine Antagonist)は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンドパミンの受容体両方遮断する薬です。

過剰に放出されているドパミンの作用を抑制して、陽性症状を改善します。

また、セロトニンの作用を抑制することで、前頭前皮質のドパミン分泌が高まり、陰性症状を改善する効果もあります。

 

リスパダール(一般名:リスペリドン)、ルーラン(一般名:ペロスピロン)、ロナセン(一般名:ブロナンセリン)等が該当します。

 

MARTA系の作用機序(代表薬:ジプレキサ)

MARTA(Multi-Acting Receptor Target Antipsychotics)は、セロトニンやドパミンだけでなく、様々な神経伝達物質の受容体(アドレナリン受容体、ヒスタミンH1受容体、ムスカリン受容体、等)に作用して、過剰な働きを遮断する薬です。

SDAと同じように前頭前皮質のドパミン分泌を活発化するため、陰性症状にも効果があります。

ジプレキサ(一般名:オラザピン)、セロクエル(一般名:クエチアピン)等が該当します。

 

統合失調症としてのエビリファイ(アリピプラゾール)の作用機序

DSS(Dopamine System Stabilizer)は、ドパミンが過剰に働いているときは抑制し、少量しか放出されていないときは、刺激するように作用する薬で、部分作動薬(パーシャルアゴニスト)と呼ばれています。

パーシャルアゴニストは、受容体を完全に遮断するのではなく、部分的に刺激する作用があります。

 

D2受容体を完全に遮断してしまうと、錐体外路障害が発現してしまいますが、パーシャルアゴニストでは部分的にD2受容体を刺激するため、ほどよい感じでドパミンのバランスが保たれます

従って、ドパミンを正常な状態に近づけることが可能となりますので、陽性・陰性症状を共に改善することができます☆

また、錐体外路障害等の副作用が起きにくいのも特徴です。

 

 

この他にも、エビリファイは以下の作用を有すると考えられています。

  • セロトニン1A受容体パーシャルアゴニスト:抗うつ作用
  • セロトニン2A受容体アンタゴニスト(阻害):錐体外路症状の改善、陰性症状の改善

主な副作用としては、アカシジア(そわそわして、じっと落ち着いていられない状態)、不眠または眠気、傾眠、不安感、頭痛、めまい、吐き気、便秘、体重増加などがあります。

 

うつ病としてのエビリファイ(アリピプラゾール)の作用機序

うつ病はセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンが少ないことによって発症することが知られています。

 

そのため、ドパミン量を正常化するエビリファイを使えば、うつ病を改善できると考えらます!

さらにセロトニン1A受容体パーシャルアゴニスト作用セロトニンを正常化するため、これもうつ病の改善に役立つと考えられます。

ただし、うつ病・うつ状態に関しては、治療薬として第1選択薬ではありません。

まずは標準的な抗うつ薬を使用し、効果不十分な場合に限り、エビリファイを上乗せあるいは変更ということが認められています。

抗うつ薬の「イフェクサー(ベンラファキシン)」については以下の記事をご参考ください。

 

エビリファイ(アリピプラゾール)の剤型

エビリファイには以下のいくつかの剤型があります。

  • エビリファイ錠
  • エビリファイOD錠
  • エビリファイ内用液
  • エビリファイ持続性水懸筋注用(※適応は“統合失調症”のみ)

統合失調症に使用する場合、上記の全ての剤型が使用可能です!

 

あとがき

2018年にはエビリファイの後継薬であるレキサルティ (一般名:ブレクスピプラゾール)も登場してきました!

 

以上、今回は統合失調症を中心に、エビリファイ(アリピプラゾール)をご紹介しました!

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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